322話 世界の崩壊なのです。
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そうなのだ。
俺は恵ちゃんにキスをしたのだ。
神相手にアクションを起こしたらなにかが起きる。俺はその可能性に賭けたのだ。
そしてその恵ちゃんだが、動揺が激しい。
両手を頬に添えてあわあわしている。
そして俺の方の感想だが、恵ちゃんの唇はとても柔らかかった。マシュマロみたいな感じだ。
ちなみに俺はファーストキスだった。
だからなのだろうか、俺も気恥ずかしい。幸い恵ちゃんの方が慌ててくれているので俺の赤面はバレてないようだ。
「……だ、大吉さんっ。私たちは神と氏子の関係なんですよっ。私を対象にするのは駄目なんですっ。ルール違反なんですよっ!」
そう叫んだ恵ちゃんは立ち上がると地団駄を踏み始める。
なんだかそうとう激しい動揺のようだ。
息も荒く肩を大きく上下させている。
そして澤井さんと河合さんの方を見たときだった。なにか違和感があったのだ。表情は先程と同じで目を閉じて笑みをうっすらと浮かべたまま立って待機しているのだが、全体的にゆらゆらと揺らぎを感じるのだ。
「……へ?」
俺は目をこすった。
なぜならば澤井さんと河合さんの輪郭がぼやけてきたからだ。そしてそれだけじゃない。部屋の中、照明のシャンデリアや絵画や絵皿などの調度品、食事のテーブル、椅子などもゆらゆらと輪郭がぼやけ失いかけている。
「な、なんだ……!?」
俺は急にバランスを崩した。
見ると足元の床もゆらゆらと揺らいでいる。
「大変なのですっ。世界の崩壊なのですっ……!!」
恵ちゃんが取り乱している。
地震のようにゆらゆらと揺れる部屋全体は半透明化していて存在がもうあやふやだ。
澤井さん、河合さんも同様に透き通って見える。
だが俺と恵ちゃんは存在をしっかり持っていた。
身体は半透明化していないし、輪郭もしっかりしている。
「なにかが起こるのですっ。大吉さん、私に掴まってくださいっ!」
「わ、わかった。手を握るぞ」
俺は手を伸ばして恵ちゃんの手を掴む。その手のひらはとても小さくて柔らかい。
そして世界は崩壊をし始めた。
もはや食堂の面影はまったくなく、澤井さん、河合さんの姿もない。すべて消滅してしまったのだ。
「澤井さん、河合さんたちは……?」
「いません。すべて消えてしまいました。元々私が創った存在なので私の世界が消えてしまったのでいっしょに消滅してしまいましたっ。……でも安心してくださいっ。現実世界のお2人が消えた訳ではありませんっ」
それなら良かった。俺は安堵する。
だがだ、視界は真っ白に染まってくる。
なにもないただ白いだけの空間だ。
「はわわ……。違う空間に接触してしまったのですっ」
「違う空間? どういうことだ?」
「私が創った空間じゃないんですっ。これは誰かが創った異世界なんですっ」
今、上下も左右もない真っ白な世界に俺と恵ちゃんはいる。
互いに繋いだ手の感触で互いの存在を確認できる。
だが、それ以外にはなにもいない。なにも見えない。ただただ真っ白……。
だが、そんなときだった。
前方にうっすらと道が見えたのだ。それは背の高い草の間にできた土の道で曲がりくねって遥か遠くまで伸びているように感じる。
「道だな」
「道ですねっ。とにかくなにかが現れたのは幸いですっ。行ってみましょうっ」
恵ちゃんは俺の手を引っ張り歩き出す。なので俺も足を進めるのであった。
世界が崩壊してしまったのです。(`・ω・´)∩
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私の別作品
「勇者パーティを追いかけて_~転倒魔法しか使えません~」連載中
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。