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321話 チュウしちゃってくださいなのです。

基本一日置きの更新(18時)とさせて頂きます。

どうぞよろしくお願いいたします。



 

 確かに俺も若い男だ。そうではないとは絶対に口にできない。

 でも、誰彼かまわず種馬にされるのは正直いただけない。

 だが、俺はこのときに気づく。




 ……もしかして、俺は逃れられないのでは……?




 そうなのだ。

 この街、いやこの世界は閉鎖空間なのだ。なので他の場所に行く手段がない。と、言うことは俺は若い女だけのこの街でこれからずっと暮らさなければならないのだ。




 なので昨夜断ったとしても今夜も同じことをされるに違いない。

 そして一度手を出してしまったら最後、今度は次の女性に求められる可能性が非常に高い。いや、真実その通りだろう。なんせ、この街に男は俺だけなのだから……。

 そして恵ちゃんの言葉通りであれば、すべての住民の女性が子供を欲しがっているのだ。



 ……マズイ。非常にマズイ。




「どうやら現在のご自分の状態に今更ながら気がついたみたいですねっ」




「……ぐぬぬ。……ま、まあ、そうだな」




 俺にはもう逃げ道はないんだろうか……。

 無意識に辺りをキョロキョロと見回し出口を探るがすべての扉の前には近衛兵が立っている。もちろんすべて女性の近衛兵だが、鎧と剣を装備していていかにも強そうだ。




「さあ、改めて尋ねます。澤井さん、河合さんのどちらかを選んで下さい。澤井さん、河合さんは大吉さんと面識のあるこの街では数少ない女性です。大吉さんも人となりは良くご存知ですよねっ。好みの方を選んで下さいっ」




 そう言って恵ちゃんは澤井さん、河合さんを俺の眼の前に立たせた。右側前には澤井さん、左側前には河合さん。2人とも微笑をたたえて俺を見ている。




 ……綺麗だな。

 正直にそう思う。この2人は本当に美少女だ。

 だが俺にはそのどちらも選べそうにない。




「さあ、さあ、さあ、どちらかを選んでチュウしちゃってくださいっ」




 恵ちゃんのその台詞に呼応するかのように、澤井さんと河合さんが目を閉じる。キスをされるのを待っているのだ。




 ……でも、しかし……。




 俺の胸の鼓動が激しくなる。額からツルリと汗が流れるのもわかる。

 ……わかってる。わかってる。

 ここは現実の世界じゃない。そして戻れる可能性は低い。だとしたら俺はこの地で女性と暮らすことも考えなくちゃならない。




 ……だが、どちらにする?

 ……清楚でスレンダー美少女の澤井さん?

 ……健康派美少女の河合さん?




 ……駄目だ。選べない。選べない。選べない。




 俺は天井を仰ぐ。

 まるでそこに答えが書かれているのを探すように。

 だが当たり前のことだが、そこに回答はない。




 ――あ……!




 俺はそのとき閃いた。

 天啓のごとく脳裏にあるアイディアが浮かんだのだ。

 そうここは神が創った世界。そしてその神は眼の前にいるじゃないか。

 神相手ならばなにかが起きる可能性がある。




 俺は覚悟を決める。

 そして席を立つと斜め前に座っている恵ちゃんの小さな顎を指先で持ち上げた。

 そして……。




「……な、な、な、な、な」




 あまりの動揺なのか恵ちゃんの言語が崩壊した。

 そしてみるみるうちに顔が真っ赤に染まる。




「……な、なんてことするんですかっ~!!」




チュウしちゃったのです。(`・ω・´)∩



 


よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。



私の別作品


「勇者パーティを追いかけて_~転倒魔法しか使えません~」連載中


「生忌物倶楽部」連載中



「夢見るように夢見たい」完結済み


「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み


「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み


「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み


「墓場でdabada」完結済み 


「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み


「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み


「空から来たりて杖を振る」完結済み


「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み


「こころのこりエンドレス」完結済み


「沈黙のシスターとその戒律」完結済み



 も、よろしくお願いいたします。

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