318話 そして朝なのです。
基本一日置きの更新(18時)とさせて頂きます。
どうぞよろしくお願いいたします。
「ちょっと話をしようか」
俺は澤井さん、河合さんに手出しすることなくそのまま会話を始めた。
それは俺がこの街に来ることになった経緯で、坂道の小さな祠から臥留子ちゃんの屋敷に入ってからの話だ。
それを時折質問を挟んだりしながらも2人は聞いてくれた。
この街の澤井さんも河合さんも高校生じゃない。
だけど俺を含め女神たちの記憶は共有していたので話は通じた。
そして気がついたときには澤井さんも河合さんも寝息を立てていたのだった。
……メイドの仕事って大変だろうしな。
掃除機や洗濯機がある訳でもなさそうだ。きっとすべて手作業なんだろう。だったら横になってすぐに熟睡してしまうのも仕方がないな。
すっかり眠ってしまった澤井さんと河合さんに安堵した俺はそっとベッドを抜け出してソファに横になった。
部屋の中はクーラーがあるとは思えないのだが、気温は高くなく俺は安心して眠りにつけるのであった。
そして翌朝。
俺が目を覚ますとベッドには誰の姿もなかった。
どうやら澤井さんも河合さんも帰ってくれたようだ。服も残っていなかったので、ちゃんと着て立ち去ってくれたようだ。
そしてしばらくしたときだった。
部屋の扉がノックされたのだ。
俺はすぐに返事をして入ってくれるように告げる。
「おはよう。よく眠れたかしら?」
「おはよう。目覚めのコーヒーを持ってきたよ」
澤井さんと河合さんだった。
2人ともピシリとメイド服を着こなしている。
そして共に笑顔だ。その表情には悪意とか怒りとかは一切感じられない。
「……ありがとう。いただくよ」
俺は淹れたてのコーヒーを楽しんだ。
とても香りが良くてあっさりした味のもので俺好みだ。
「昨日の夜のことなんだけど……」
俺は話を切り出した。
眼の前に2人がいるのだからこれは避けては通れないからだ。
「わかっているわ。決められなかったのよね」
「こんな美少女メイドなんだから、迷うのはわかるよ。両方手出しできるって話なら手出しされちゃったと思うけどね」
……ぐぐぐ。
完全に見抜かれていた。
確かに澤井さんと河合さんのどちらにでも”お手つき”が可能って条件だったなら、俺は自分の理性を抑えられなかったかもしれない。
澤井遙香さんも河合花菜さんも、とびっきりの美少女なのだ。スタイルも抜群でとても魅力的なのは間違いないからな。
「そうそう。朝食の用意ができてるわ」
「そうだった。領主様に呼ばれているのよ」
どうやら朝の食事も恵ちゃんといっしょのようだ。
■
それから着替えを済ませた俺は澤井さんと河合さんの案内で食堂に行くのであった。それは昨夜の夕食を食べたところと同じで、やはり長テーブルの奥には恵ちゃんの姿があった。昨夜は黒だったドレスが今朝は白になっている。どうやら領主様と言うのは食事の度に違う服装に着替えをするようだ。
「おはようございますっ」
恵ちゃんが元気いっぱいに挨拶するので俺も返事をする。
そして昨夜と同じように恵ちゃんの右斜め前の席に座るのであった。
怒ったりはしていないようです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「勇者パーティを追いかけて_~転倒魔法しか使えません~」連載中
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。