317話 逃亡不可能なのです。
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考えたらそうだ。
恵ちゃんは子宝の神様なのだ。なので俺が澤井さん、河合さんのどちらかにお手つきさせて子宝なんて展開を考えていたのは間違いないだろう。
ましてこの街は恵ちゃんが造った創造空間なのだ。
現実世界であればちょっとは自制したかもしれないが、この世界で遠慮なんてすることはないに違いないだろう。
「お、落ち着いて欲しい。俺にその気はないから……」
俺はそう言って逃走を図ろうとした。
だが、そのことを事前に対策していたようで出口の扉には澤井さんと河合さんが立ち塞がっている。
なら、窓から……。と、思ったのだがこの部屋は3階なのだ。飛び降りたら無傷ではいられないだろうからこれも駄目だ。
ならば、と思った俺はどうかしていたんだと思う。
なぜならばベッドに飛び乗って布団を頭から被ってしまったのだ。
もう逃げられないなら隠れるしかないと思っての迂闊な判断だった。
まあ、頭隠して尻隠さずに近い状態だ。なんせ居場所がバレバレ。
「……観念してほしいわ」
「もう逃げられないからね。私たちのどっちかを選ぶまで」
そんな2人の声が聞こえてきた。
すると薄手の布団越しにするすると布が擦れる音がする。
なにをしているんだろうと俺は考えたが、どうも嫌な予感しか浮かばない。
「ふふふ。お邪魔するわね」
「加茂くん。用意がいいね」
なんと2人が俺が寝ているベッドに入って来たのだ。しかも2人とも全裸だった。
そして俺が被っている布団の中へ滑り込んで来る。
……う、ぐぐぐ。
両側からそれぞれ裸で横に入ってくるので、俺はなるべく接触しないように気をつけの姿勢になってしまっている。
なのにその俺の腕に左右から裸の肌の柔らかいものが押し付けられるのだ。
耐えろ。俺の理性。
「私も河合さんも覚悟はとうにできてるのよ」
「そうだよ。ただ領主様から選ばれるのはどちらかひとりだけって話。だからよく考えて判断してよ」
そんなことを言われても困る。
だいたい俺の意思はどうなっているのだ? 俺にその気がないのだから諦めて欲しいのだが。
……ん? 待てよ。意思……。
「なあ、澤井さんと河合さんは合意の上で来たって言ってたよな? 別に恵ちゃんに命令されて来た訳じゃないんだよな?」
「そうよ。領主様に頼まれたけど最終的には私の意思よ」
「そうだね。私も領主様にお願いされたけど決めたのは自分だよ」
そう返事が返って来るのだった。
そこで俺は疑問に思う。なぜ2人はそれほどまでの考えを持って俺に関係を求めてくるのかだ。
「……なんで俺なんだ? どうしてそこまで俺に拘るんだよ?」
すると2人とも俺の顔を見て口を開く。
「当然よ。だってこの街には男性がいないのよ?」
「そうだよ。200年間子供が誕生しなかったんだよ。子供が産まれたら快挙なんだよ」
……なんてことだ。
要するに子種が必要ってことなのだろう。
つまりは俺じゃなくて、男であれば誰でも良かったってことになるんだろうか……。
逃げられないのです。(`・ω・´)∩
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私の別作品
「勇者パーティを追いかけて_~転倒魔法しか使えません~」連載中
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。