315話 恵ちゃんとの夕食なのです。
基本一日置きの更新(18時)とさせて頂きます。
どうぞよろしくお願いいたします。
「いちおう尋ねるが、どうしてメニューで料理を選ばせるんだ? 普通はこういう場合、コース料理じゃないのか?」
すると恵ちゃんはニッコリ笑顔になる。
「それでも良かったんですっ。でも、大吉さんはフレンチのフルコースの食事マナーなんて、知りませんよねっ」
やはり俺のことを考えてのようだ。確かにそれの方が助かるな。
「……ああ。確かにな。俺はファミレスレベルの方がいいな」
俺の返答に恵ちゃんは満足そうに頷くのであった。
やがて澤井さんと河合さんがワゴンを押しながら食堂にやって来た。
そして恵ちゃんの前にはビーフカレー、俺の前には味噌ラーメンを置く。
「「どうぞ、ごゆっくりお召し上がりください」」
ぴったりと息のあった声を同時に放った2人のメイドは腰を折り静かに去って行く。
それを無言で見送った俺は眼の前の味噌ラーメンに注目する。
うん。町のラーメン屋でよく見かける普通の味噌ラーメンだ。変なところはなにもない。
「いただきますっ」
「いただきます」
そして俺はれんげを取り味噌ラーメンのスープを飲む。
……美味かった。
酸味がほどよい味噌味でなんとも食欲をそそる。麺もしこしこと歯ごたえがあって噛むことに喜びを覚える。
「どうですかっ?」
「ああ、美味いな。こんなに美味い味噌ラーメンは久しぶりだ」
俺は正直にそう答える。
はっきりとは憶えていないのだが、以前、行列ができるラーメン屋でこれと似た感じの味の味噌ラーメンを食べたことがある。それ以来の美味だ。
「ビーフカレーもおいしいですよっ。少し食べますかっ?」
「あ、ああ」
俺がそう返事するとテーブルの上に常時置いてある小皿に取り分けてくれた。
そこにスプーンがあるので俺はそれを取る。
そしてビーフカレーを食べる。
「おお。これも美味いな」
香辛料が良く効いていて辛味も適度。そしてごろごろの塊の牛肉が美味い。
こんなビーフカレーはめったに食べられないだろう。
そんな感じで俺たちは夕食を楽しむのであった。
「そう言えばずっと気になっていることがあるんだが」
「なんですかっ。なんでも訊いて下さいっ」
俺は、恵ちゃんが俺より200年先にこの世界に現出してこの街を造ったと聞いた。
だが知っておきたいことが他にもあるのだ。
「他の女神たち、つまり呂姫ちゃん、集子ちゃん、秀子ちゃんはどこにいるんだ?」
そうなのだ。
ドラゴンを倒してゲーセンを脱出した直後に俺はひとりだった。今、眼の前に恵ちゃんはいるが他の女神たちの居場所も俺は知りたかったのだ。
「残念ですが、わかりませんっ」
それが恵ちゃんの答えだった。
とにかくこの200年間一度も会っていないし連絡もつかないそうだ。
「大吉さんのお話を信じるに、まだこの世界に現出していないか、それとも違う場所に出現してしまったかだと思いますっ」
「違う場所? それはこの世界の遠くってことか? それともこの世界とは違う世界にってことか?」
「わかりませんっ。ただドラゴンと戦っていたゲーセンまでは臥留子ちゃんの造った異空間だったのですから、この世界へとの切り替わりに臥留子ちゃんが絡んでいる可能性は高いですねっ」
なんてことだ。
つまりは離れ離れってことだ。これはなんとかしなくちゃならないな、俺はそう思うのだった。
そして食事を終えるとちょうどのタイミングでメイド服の澤井さんと河合さんが食堂に入って来た。そして食べ終えた食器をテーブルからワゴンへと移す。
そして食後のお茶を出してくれるのだった。
「さて、大吉さんっ。これからが本題なのですっ」
恵ちゃんが真剣な顔つきになって言う。
なので俺もなんとなく居住まいを正してしまう。
「な、なんだ? 改まって」
「今夜。お手つきしてもらいますっ」
ニヤリと笑みを浮かべた恵ちゃんに、なにか嫌な予感がしてきたのだった。
食事はおいしかったのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「勇者パーティを追いかけて_~転倒魔法しか使えません~」連載中
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。




