314話 広くて豪華な客間なのです。
基本一日置きの更新(18時)とさせて頂きます。
どうぞよろしくお願いいたします。
謁見は終わった。
俺は澤井さん、河合さんに案内されて客間に到着したのであった。
その客間を見て、俺、唖然。
まずだだっ広い。
俺の住んでいる寮の畳の部屋がいくつ入るのだろう。
いや、広さだけなら俺の部屋だけじゃなくて、暮らしている鉄筋2階建ての神武寮そのものが入ってしまうんじゃないかと思ってしまうほどだ。
まあ、さすがにそれは言い過ぎか……。でも、そんな気がしてしまうくらい広いのだ。
天井も高く窓の分厚いカーテンは俺の背丈の倍以上はある。
壁は白くて巨大な湖畔の風景画が飾られている。
大人4人でもゆったり掛けられる白いソファセットもあり、テーブルも天板が分厚く豪華な意匠が施されている。
そしていちばん驚いたのはベッドだ。
横幅は大人4人は余裕で寝られるほどもあり、その上には天蓋がある。
まさに貴族の客室だ。
「自由に使っていいと言われているわ」
「後でお茶を用意するね」
メイド服姿の澤井さん、河合さんがそう俺に告げて退出して行った。
俺はとりあえず、ベッドに身を放り出す。
ポスンと一度深く沈み込んだベッドだったが、やがて俺の身体をゆっくり押し上げる。
「……すげえ、ふかふかだな」
こんなベッドなんて初めてだ。
さすがは領主。いい暮らししてるんだなあと思った。
この後、澤井さん、河合さんたちがお茶を用意してくれた。
十分にお茶を堪能したら、眠くなったのでベッドを使うことにした。
柔らかいベッドは寝心地が良く、俺はすぐに眠りに落ちるのであった。
ノックの音で目が覚めた。
窓の外は暗い。どうやら日が暮れたようだ。
返事をすると扉が開かれて澤井さんと河合さんが入って来た。
どうやら2人は俺専属のメイドみたいだな。
「食事の用意ができたわよ」
「領主様といっしょにね」
もう夕食の時間のようだ。
俺は2人に案内されるまま豪華な廊下を歩く。
やがて謁見の間よりは狭いがそれでも俺に与えられた寝室くらいに広い部屋に案内された。
ここは食堂だった。
全長10メートルはあるんじゃないかと思う長テーブルがあった。
そこには純白のテーブルクロスが掛けられていた。
そして上座の位置。つまりいちばん奥に恵ちゃんの姿があった。
食事用に着替えたようで黒いドレス姿だ。
だが俺には小さな子が精一杯背伸びしておめかししているようにしか見えない。
それが微笑ましいので、俺は表情には出さずに小さく笑う。
「お待たせしましたっ。いっしょに食事なのですっ」
笑みを浮かべながらそう言った恵ちゃんは自分の近くの席、正確に言えば右斜め前の席を俺に勧めてきた。
なので俺はそこに座る。
「ご馳走になっていいのか?」
「当然ですっ。で、なにが食べたいですかっ?」
俺は、は……? となった。
こういう貴族のディナーは事前に決められているコース料理が普通じゃないのかと思ったからだ。
だが恵ちゃんは俺の戸惑いなどまったく感じないようで、いつものニコニコ顔である。
「割となんでもありますよっ。これを見て下さいっ」
そう言って恵ちゃんは自分の前に伏せてあった薄い本のようなものを差し出してきた。
見るとメニューだった。しかも写真付きだ。
そして種類はファミレス並に豊富だ。そしてメニュー内容もファミレス並のもので、貴族のディナーで並ぶ大皿料理などなにひとつない。
「私はビーフカレーにしますっ。大吉さんはなににしますかっ?」
訊かれたので俺はメニューに目を落とす。
料理の種類はファミレス程度なので、俺はあまり悩む必要はなかった。
「じゃあ、味噌ラーメンにしてくれ」
天井が高くて広くて巨大な長テーブルがある豪華な貴族の食堂で俺たちはなんとも庶民的な食べ物を注文するのであった。
まあ、コース料理を出されても食事のマナーなんてしらないから、こっちの方が楽だな。
豪華な部屋に戸惑ってしまうのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「勇者パーティを追いかけて_~転倒魔法しか使えません~」連載中
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。