313話 長い時が経過していたのです。
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そうなのだ。
玉座とも言って過言じゃない立派な椅子に腰掛けていたのは、なんと子宝の神:神子恵ちゃんだったのだ。
「大吉さんっ、よくぞこの街に来てくださいましたっ。私はずっと貴方が来てくださるのを長い時待ち続けていたのですっ」
「……は、はあ」
俺は他人から見たら鳩が豆鉄砲を食らったかのような間抜けズラをしているだろう。
なにがなんだかさっぱりわからん。
「……あ、あのお訊きしたいのですが質問してもよろしいでしょうか?」
俺はできるだけ丁寧な態度で恵ちゃんに言う。なぜかよくわからんのだが、相手は一応領主なのだ。変な言動で不敬罪なんて言われたらたまらん。
街の風景も居並ぶ近衛兵たちも中世の時代とそっくりだ。なので厳しい身分制度なんかがあるかもしれない。だから投獄とか打首がマジにありそうだからな。
「大吉さんは特別ですっ。タメ口でいいんですよっ」
すると恵ちゃんは鷹揚に頷いて、そう発言した。
そうか。だったら気ままにさせてもらおう。
「なら、お言葉に甘えて。……お前、さっき俺たちといっしょにドラゴンと戦っていただろうが? なに言ってんだ?」
「ドラゴンですかっ? それはすごいですっ。でも、どういうことでしょうかっ?」
「そのままのことじゃないか――」
俺はこれまでの経緯を一から話した。
PCショップから連絡があり、注文していたゲーミングPCが店に届いたこと。そしてそれを受け取るにはダイキチーナの姿じゃないとまずいこと。
そのため臥留子ちゃんに変身を依頼するために俺、恵ちゃん、呂姫ちゃんの3人でお宅を訪問したこと。
そこが臥留子ちゃんが造った創造空間で不思議な世界だったこと。
お金が入った長持があって、最後にはその中に集子ちゃんがいて合流したこと。
そして場所がゲーセンになって、いろんなモンスターと戦ったこと。最後に秀子ちゃんと合流してラスボスのドラゴンを倒したこと。
それからゲーセンを抜けたら、俺ひとりで草原にいて、道を進んで来たらこの街を見つけたことだ。
恵ちゃんは、なるほどなるほどと相槌を打ちながら俺の話を聞いていた。
「大吉さんの話が本当だとすると、この世界は臥留子ちゃんが造ったもので、この街も臥留子ちゃんが造ったことになりますねっ」
「まあ、今までの経緯からしてそうなるだろうな」
だが、そこでニヤリと悪い笑顔を見せてきたのだ。
「でも私はこの街にずっといますっ。臥留子ちゃんとはこの街ができたときから会っていませんよっ。なのでこの世界は私が造った世界になりますねっ」
「な、なんだと……」
俺は恵ちゃんと問答を交わす。
するとあることが判明する。この街はマジで恵ちゃんの能力で造ったそうだ。そして200年経過しているのも間違いないらしい。
ただ俺の話も嘘とは思えないので、ゲーセンを出て草原に俺が降り立ったときに、この街を含む世界が誕生したようだと言う。
「元々、神が造った異空間なのですっ。なので時間の流れが正常じゃないんですっ。大吉さんを含む私たちがゲーセンを出たときに、どうやら私がこの世界を造ったようですっ。私にはドラゴンと戦った記憶がないのですが、可能性として私の方が200年早く草原に出現したのだと思いますっ」
「はあ?」
恵ちゃんの説明は続く。
どうやら俺、恵ちゃん、呂姫ちゃん、集子ちゃん、秀子ちゃんの5人でそろってゲーセンを脱出できた。
だが、その後のこの世界に現出するまでの時間差があったらしい。
おそらく200年前に恵ちゃんがこの草原の世界に現れて、その後200年経過した今日、俺が出現したらしいのだ。
なんか信じてもいいのか判断不能だが、あいにく恵ちゃん以外の神様はいないので俺は保留の気持ちを持ちつつも表面上は納得した顔をしたのであった。
200年経過していたのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「勇者パーティを追いかけて_~転倒魔法しか使えません~」連載中
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。