312話 領主様の正体は、なのです。
基本一日置きの更新(18時)とさせて頂きます。
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馬車は石畳の大通りを疾走し続けた。
交通規制でもされているのか、要所要所に衛兵が立ち並んでいるので、人々が歩道から車道に出ることがない。
そして他の馬車も見かけない。
「この馬車は優先されているのか?」
「そうよ。領主様の馬車ですもの」
「そうだよ。他の馬車は通りを走らせることは禁止になってるよ」
澤井さんと河合さんがそう答えてくれる。
やはり交通の規制がされているようだ。
つまりはVIP扱いってことだろう。
そして馬車は領主城に到着した。白亜の城だった。
馬車寄せに停められた馬車から俺は澤井さん、河合さんの案内で降りる。
見上げると見ているだけでめまいがしそうなほど高い尖塔がある。そしてでかい。
俺はこの城のあまりもの巨大さに圧倒されてしまった。
「……なあ、こんな場所に俺なんかが本当に入っていいのか?」
思わず気弱な発言をしてしまう。
だが、そんな俺を見ても澤井さんも河合さんも笑顔で頷く。
「いいのよ。領主様からの招待なんですもの」
「いいんだよ。領主様から加茂くんを連れて来て欲しいって言われているんだから」
どうやら俺はどうしてもこの城に入らなきゃならないらしい。
俺はひとつ深く息をする。そして覚悟を決めるのであった。
城の中はとにかく天井が高い。この一言で尽きた。
そして通路の壁には大きな絵画や台に載せられた花瓶や壺が並べられている。
俺には美術の素養がないのでわからないのだが、きっととても価値のある品々なのだろうな。
「……なあ、領主様って、どんな人なんだ?」
「そうねえ、領主様は領主様よ」
「オーラを感じる人だよ」
俺が領主について質問すると2人からは容量の得ない返事がある。
これでは性格や身体的特徴とかがぜんぜんわからん。
だが、澤井さんも河合さんも笑顔を崩さないが、その裏側に強い意思を感じるので俺の質問にはこれ以上答えてくれなさそうだ。
そして近衛の兵が両脇に立つ一際豪華な造りの扉の前に着いた。
近衛兵は全身甲冑を身に着けて、1人は長い斧を1人は剣を装備している。2人とも面覆いを上げているのでもちろん女性だとわかる。
「お連れしました」
澤井さんがそう近衛兵に告げると兵たちは深く頷いて扉を開けるのであった。
「領主様がお待ちです。どうぞ」
そう言われて俺と澤井さん、河合さんは扉を潜るのであった。
するとそこは大きな部屋、いや空間だった。
天井は高く3階建て分くらいありそうだ。そして床には毛足の長い赤い絨毯が長く奥まで敷かれており、その脇に等間隔で武装した全身鎧姿の近衛兵たちが並んでいる。
俺は澤井さんと河合さんの後を着いて、ゆっくりと進む。
奥は3段ほどの階段がありその頂上には背もたれが長い金ピカに光る椅子がある。
王城ならば玉座と呼ばれるものだろう。
そしてその椅子には小柄な人物が座って俺たちの方を見ているのであった。
「頭を下げて」
「許可が出るまでそのままだからね」
領主まであと3メートルくらいの距離になると立ち止まった澤井さんと河合さんが小声で俺に指示を出す。なので俺は頭を下げたままにした。
「加茂大吉さんですねっ。頭を上げて下さいっ」
なんとも聞き覚えのある声がした。
そしてそれは許可の言葉だったので、俺は頭を上げる。
すると豪華な椅子に座っている人物と目があった。
「……げ。め、恵ちゃんじゃねえか」
俺は小さな声で叫び声を上げるという妙な行動をしてしまった。
領主様は恵ちゃんだったのです。(`・ω・´)∩
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私の別作品
「勇者パーティを追いかけて_~転倒魔法しか使えません~」連載中
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。