311話 女だけの街なのです。
基本一日置きの更新(18時)とさせて頂きます。
どうぞよろしくお願いいたします。
……う、ぐぐぐ。柔らけえ……。
右側にはささやかだが形の良い澤井さんの柔らかいもの。左側には豊かにメイド服を押し上げる河合さんのたわわなもの。
それらが俺の両の二の腕に押し付けられている。
……ま、まずい。どうにかなってしまいそうだ。
「そ、そうだ……。あ、案内してくれるんだよね。だったら……」
俺は理性を保つためにそう口にした。
別に領主に会いたいとはちっとも思ってないんだけど、この場をなんとかしなきゃならないと思ったのだ。
「そうね。じゃあ行こうかしら」
「そうだね。じゃあ案内するよ」
そうして絡ませた腕を解いた澤井さんと河合さんは俺の右手、左手を引っ張って歩く。
方角は前方に見える領主城の方向だった。
大通りを俺を引っ張りながら澤井さんと河合さんは進む。
するといきなり人通りが現れた。
家屋や店から建物の間の裏路地からとどんどん人が増えていく。
そして見れば全員女性だった。
確かに澤井さん、河合さんが言う通りにここは女だけの街らしい。
馬車も走っていた。
見れば御者も女性で、巡回する兵士たちの姿もすべて女だった。
「本当に女だけなんだな」
「そうよ。言ったでしょ、加茂くんが初めての男性訪問者だって。さっきまで加茂くんを歓迎するためにサプライズで住民みんなが隠れていたのよ」
「でもね……。女しかいないから、なんて言うか、変化がないって言うか、退屈って言うか、そんな感じなんだ」
澤井さんと河合さんがそう説明してくれる。
そこで、俺はやっぱり疑問を感じてしまう。女だけで社会が成り立つのか? ってことだ。子供が産まれないってことはいちばんだけど、それ以外にも力仕事や危険な仕事もあるだろう。それらはどうなっているんだろうか……?
「男がいないんだから、子供は産まれないわよ。でもこの街の住民は年を取らないから問題ないわ」
「男がいないから、力仕事や危ない仕事も女がやってるよ。この街の住民は怪我とか病気にならないから大丈夫だし」
なんともファンタジーな街だ。
死なない、怪我や病気もない。なら、女性だけでも問題ないんだろうな。
そして俺は馬車に案内された。
それはおそらく領主の紋章が入った立派な箱型の白い馬車で各部に見事な装飾がされていた。
馬も白馬で2頭立て。車内に入ると真っ白いソファが対面に設置されていた。
「なんとも見事だな」
俺は感嘆の言葉を思わず漏らしてしまう。
「領主様の馬車よ」
「この街でいちばん豪華な馬車だよ」
俺は進行方向に向かっている後部座席へ案内された。そして澤井さんと河合さんは俺の対面の前部座席に並んで腰掛ける。
すると馬車が走り出した。
馬車は乗り心地が悪い。
ファンタジー物語のアニメや小説にはよくそう描写されている。
だが、この馬車は乗り心地が良かった。
多少は路面の状態を拾って腰が突き上げられるときもあるが、概ねフワッとした乗り心地だ。サスペンションに工夫がされているのかもしれない。
まあ、領主様の馬車なんだから贅沢に造られているのかもしれないな。
俺は車窓から外を眺めた。
通りに立ち並ぶ煉瓦色の建物は統一感があっていい感じだ。
そして歩いている大勢の……女性たち。
みんな若い。そして美人ばかりだ。でもみんな同じ格好ではなくて、髪型も着ている服もそれぞれ個性を出している。
「不思議な街だなあ」
「そうかしら?」
「普通よ」
俺の驚きは澤井さんと河合さんには通じないようだった。
女ばっかりなのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「勇者パーティを追いかけて_~転倒魔法しか使えません~」連載中
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。