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31話 揚げ物です。

【毎日昼の12時と夕方の18時に更新します】


この物語は毎話毎話が短いです。

それは4コマ漫画のようなテンポの良さ、余韻を全面に打ち出しているからです。

……決して、私の手抜きではありません。

……きっと。





「お待たせですっ」




 威勢の良い声が聞こえてきた。

 もちろん恵ちゃんだ。




「おわっ!

 な、なんだそれっ!」




 俺は叫んでしまった。




 説明すると、

 恵ちゃんが大皿を持って部屋に帰ってきたのだが、

 それにはてんこ盛りで具が乗っていたのである。




「え? おかずですよっ。

 今日はアジフライとハムフライだったので、それの残りを全部。

 あとは昨日のおかずのクリームコロッケとコーンコロッケ、

 そして付け合わせのポテトサラダと春雨サラダを持ってきましたっ」




 こともなげにそう言うのである。

 だがそれはどうみても五人分、いや十人分はありそうだったのだ。




「そ、そんなにたくさん誰が食べるんだっ?」




「ええっ! 

 もちろん私と大吉さんですよっ。他に誰がいると言うんですかっ?」




 恵ちゃんはそう言って大皿をちゃぶ台の上にドンッと置いた。

 そうとう重そうだ。




「そ、そんなにたくさん食えるかっ! 

 それに揚げ物ばかりなのはなんでだ?」




「あーっ、そんな簡単なこともわからないんですか?

 もちろん揚げ物ばかりなのは、この寮が若者ばかりだからですっ。

 若い人は揚げ物が好きだからですっ」




「そ、そうなのか?」




 俺は驚いて尋ねる。

 初耳だが説得力はある。確かに俺も含めてフライは好きなやつは多いだろう。




「……と、言うのは表向きです。

 本当は食中毒が怖いからです。とりあえず油で揚げとけば大丈夫ですからねっ」




 恵ちゃんが舌をぺろりと出す。




「……そんな裏話はせんでもいい」




 俺は改めててんこ盛りの揚げ物を見る。

 高さ二十センチは越えていそうな盛りつけである。




「でもまあ、

 食べきれるかどうかは別として、よくこんなにもらえたな」




「いつも作りすぎて残ってしまうそうですっ。

 調理のおばさんがそう言ってましたっ」




「なるほどな。

 まあ、足りなくなるよりはいいんだろうな」




 俺は食堂の裏事情に感心しながらも箸を取ろうとした。




 そのときである。




「ちょっと待ったあっ!」




 恵ちゃんが叫んだ。

 さっきから待ったが多いな。




「持ってきたのはおかずだけですよっ。

 ご飯はどうするんですかっ」




「ああ、そうだな。

 俺はこのおかずを見てお米のことなんか、すっかり忘れちまったよ」




「ダメです。食事はバランスが大事ですっ」




「バランス?」




 俺はこの揚げ物の大群のどこがバランスが取れた食事なのか問い詰めたかったが、

 恵ちゃんはなにか言いたそうなので待ってみた。




「そうですっ。

 今、ちゃっちゃと用意しますからっ」




 そう言うと恵ちゃんは立ち上がる。

 そして廊下への扉をガラッと開けた。




「どこ行くんだ? 

 俺はてっきりこの部屋でご飯を炊くのかと思ったぞ」




「違いますっ。

 炊いてもいいんですが時間がかかるので、下からもらってきますっ」




 そう言うと恵ちゃんは足取りも軽く行ってしまったのである。

 俺は仕方なく待つことにした。




 


よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。


私の別作品

「生忌物倶楽部」連載中


「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み

「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み

「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み

「墓場でdabada」完結済み 

「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み

「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み

「空から来たりて杖を振る」完結済み

「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み

「こころのこりエンドレス」完結済み

「沈黙のシスターとその戒律」完結済み


 も、よろしくお願いいたします。

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