308話 ゲーセンであった必然性なのです。
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それからしばらく進んだときだった。
道は壁の両側にゲーム筐体が並べられた薄暗いゲーセン内のままで、ゲーム機から流れる光と音楽と効果音だけが聞こえてくるずっと前からと同じ風景だった。
だが、それに異変が起きた。
まだ遥か前方なのだが、明るくなっていたのだ。まるで洞窟の中から出口の光を見つけたかのような気分。
「出口だろうか?」
「そうみたいですねっ。これでこのゲーセンから出られるかもしれませんっ」
「……そう言えばなんだけど、どうして魔物たちと戦った場所がゲーセンだったのかしら?」
呂姫ちゃんがポツリと言う。
確かにそれはそうだ。単純に戦う場としたら例えばコロッセウムのような闘技場でも良かったはずなのだ。
それについては疑問だな。
「……ひょっとしてじゃが、儂の場合と同じじゃないのかのう?」
「集子ちゃんの場合と同じ? どういう意味だ?」
俺は集子ちゃんが言っていることがわからないので正直に尋ねた。
「儂を見つけるまで長持の中に貨幣が入っていたのじゃろう? 一万円札の次は五千円札と言う風にじゃ」
「あ、わかりましたっ。つまりお金がたくさん見つかったのは高利貸しの神である金尾集子ちゃんを連想させるために臥留子ちゃんが仕組んだってことですねっ?」
「そうね、わかったわ。それを踏まえると今度は遊戯秀子を連想させるために風景がゲームセンターだったってことね」
「そうじゃ。現に秀子はゲーセンにいたからのう。臥留子はそうイメージして風景をゲーセンにしたんじゃろうな」
なるほど、それは理解できる。
この空間は臥留子ちゃんが作った世界だ。なので彼女なりにイメージした世界観があって、それに基づいて世界を造っているってことだろう。
つまりは臥留子ちゃんが考えたゲーセンである必然性だ。
そして俺たちはやがてゲーセンを抜けた。
するといきなり草原に出た。
見渡す限り草地が広がり、気持ちの良い風が草を揺らす波を作り遠くへ流れて行く。
空には白い雲がぽっかりと浮かび、ほぼ真上には太陽が燦々と輝いている。
そして俺が立っているのは土でできた細い道だ。
振り返ると背後には濃い森が広がっていた。どうやら俺は森から出た設定になっているらしい。
そこでだ。
俺は大事なことに気がついたのだ。
「……誰もいない?」
そうなのだ。
俺の周りにはいるはずである恵ちゃん、呂姫ちゃん、集子ちゃん、秀子ちゃんの姿がなかったのだ。
つまり俺はたったひとりになってしまったのだ。
俺は声が続く限り恵ちゃんたちの名を呼んだ。だが返ってくるのは風の音だけだったのである。
ひとりになってしまったのです。(`・ω・´)∩
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私の別作品
「勇者パーティを追いかけて_~転倒魔法しか使えません~」連載中
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。