304話 呑兵衛確定なのです。
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それからもドラゴンに変化があった。
閉じたり開いたりを繰り返した口を今度は俺たちの方へと向かって開けたのだ。
「ま、まずい! ドラゴンブレスか?」
「……違うようですねっ。喉の奥に光が見えませんっ」
「そうね。……なにか待っている感じだわ」
「ふぉふぉふぉ。そうじゃのう。待ってると言うよりも欲しがっている感じじゃのう」
「ウィスキー投擲作戦続行」
そうなのだ。
それはまるで巣に戻ってきた親鳥に餌をねだる雛鳥を思い出させる仕草だったのだ。
「次、行くぞ!」
「わかりましたっ。行きますっ」
「ええ、了解よ」
俺と恵ちゃん、呂姫ちゃんの3人は再びウィスキー瓶をドラゴン目指して投げる。
すると驚いたことにドラゴンが近づいてくる瓶に自ら口を開けて飲み込み始めた。
そしてバリバリと音を立ててガラス瓶を噛んで割っているのがわかる。
「完全に好みのようだな」
「知りませんでしたっ。ドラゴンは呑兵衛なんですねっ」
「見て。もうドラゴンは攻撃する姿勢も取ってないわよ」
「ふぉふぉふぉ。そうじゃのう。あれでは餌やりと変わらんのう」
「西洋竜も酒好き決定」
それからも俺たちはウィスキーを投げる。投げる。投げる。
途中からはもしものときへの攻撃態勢をとっていた集子ちゃん、秀子ちゃんもウィスキーを投げる作業に加わるのであった。
ドラゴンは非常に満足のようで、ときおり舌を口の中で転がしている。
これはもう間違いなく断言できる。
ドラゴンの好物、……いや、弱点は酒なのだ。
そしてドラゴンは次第に酔いが回り始めたようで態勢もだらんとして緊張感がない姿勢になっている。
だけど酒はもっと欲しいようで口をなんども開け閉めして催促してくるのだ。
「大変ですっ。もうお酒の残りが少ないですっ」
「そうね。もう5、6本しか残ってないわ」
そうだった。
俺、恵ちゃん、呂姫ちゃん、集子ちゃんの4人で10本ずつリュックに入れたのだ。
なので合計40本。
そのウィスキーの瓶の残りがわずかになってしまったのだ。
ドラゴンを見ると、もっともっと欲しいようで口を開けたり閉じたり舌を出したり引っ込めたりしている。
あれはもっとくれ、と訴えているのだろう。
「と、とにかくわかっているのは酒さえ与えていればドラゴンは無害ってことだな」
「そうですねっ。これはお酒がもっと必要ですっ」
「そうね。確かさっきの長持の中にウィスキーはまだ残っていたわよね」
「ふぉふぉふぉ。そうじゃのう。まだ残っていたはずだのう」
「回収決定。私が行く」
そして作戦が決まる。
俺だけが残ってウィスキーの瓶の投擲を続ける。そして残る4人がリュックを持って長持に残っているウィスキーを回収することになったのだ。
「俺がなんとかゆっくり酒を与えて時間稼ぎをするからな」
「わかりましたっ。私たちが残りを持って来ますっ」
そう言って恵ちゃん、呂姫ちゃん、集子ちゃん、秀子ちゃんが空のリュックを持って長持まで走り去るのであった。
西洋竜も酒好き確定なのです。(`・ω・´)∩
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私の別作品
「勇者パーティを追いかけて_~転倒魔法しか使えません~」連載中
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。