29話 品定めです。
【毎日昼の12時と夕方の18時に更新します】
この物語は毎話毎話が短いです。
それは4コマ漫画のようなテンポの良さ、余韻を全面に打ち出しているからです。
……決して、私の手抜きではありません。
……きっと。
「神様の居場所ですよっ。
な、なんて罰当たりなっ」
恵ちゃんが顔を真っ赤にした。
どうやら怒っているようだ。
「でもな。
五千円はやっぱり高いし、それに八百万の神々って言うだろう?
小鳥の巣にも神様はいるんじゃないのか?」
俺は思いついたことを言ってみた。
すると恵ちゃんは鼻息も荒く胸を張る。
……身体に比例した小さい胸だけどな。
「ハンっ。
あんな低級神といっしょにしないでくださいっ」
「……神様に高級と低級があるのか?」
俺は初めて聞く定義に関心を持った。
「あるんですっ。
神々は万物に宿るって言っても道具なんかに付くのはつくも神って言って、
妖怪に近い存在なんですっ」
「なるほどな。
……で、恵ちゃんは違うのか?」
「あ、当たり前ですっ。
私はちゃんとした神様ですっ。その証拠にちゃんと祠にいたじゃないですかっ」
「いまいち小さい祠だったけどな」
俺はデパートの隅にあった朽ち果てた祠を思い出す。
昨日あそこで拝んだ結果、今目の前に恵ちゃんがいるのはちょっと感慨深いな。
「……いちいちトゲがある言い方ですねっ」
恵ちゃんはプイとふくれた。
「……で、話を戻すけどさ。
やっぱり神棚じゃないとマズイんだよな?」
「です。
ホントはなるべく大きくて立派なやつがいいんですが、
予算のこともあるし、今回はとりあえずにしますっ」
お金を出すのは俺なのに、
なにか釈然としないやりとりだ。
「ん。わかった。
じゃあ、五千円のやつでいいか?」
俺はいちばん小さな神棚に手を伸ばした。
「ちょっと待ったっ。
もう少し」
恵ちゃんの待ったがかかった。
俺は仕方なく六千円のものを取ろうとした。
五千円のものよりも千円高いこともあって、
五千円が扉がひとつしかないのに対して、三つあるものだ。
「ちょっと待ったっ」
また声がかかる。
「もうなんだよ」
「その左側にあるやつがいいなっ」
「ええっ、これか?」
それは八千円もするものだった。
手すりがついたもので確かに見栄えはいい。
「……でもなあ、
ちょっと高いぞ」
「そこをなんとかっ」
恵ちゃんは俺を見て両手を合わせた。
目はうるうるしている。
「……お前、なんか異教の仏を拝んでないか?」
「ぐすん。細かいことはいいじゃないですかっ」
仕方ない。
俺は覚悟を決めて八千円に手を伸ばす。
「あーっ、ちょっと待ってくださいっ。
そ、それじゃなくてもう一段上にあるものを……」
俺は見上げる。
するとかなり立派なものがあった。
大きさは八千円のものと変わらないのだが、
象嵌が細かくて職人の手がしっかり入っているのがわかるものだった。
しかも神具九点セットということで、
鏡や御神酒を入れる器や榊用の花瓶まで付いているのだ。
「……お前、調子に乗るなよっ」
俺はそう言って恵ちゃんを見た。
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「生忌物倶楽部」連載中
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。