285話 気持ちが落ち着いたのです。
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……どうする? どうする? どうする?
俺は理性と欲望の板挟みになっていた。
いくら恵ちゃんもどきが向こうから誘っているとはいえ、本当の恵ちゃんはそれを望んでいないのだ。
なので、俺がこの欲望のまま事を起こしたら……。そりゃあ、まずいだろう。
ええい。……なにやってんだ俺は。
そんなときだった。
俺の頭の中でなにかが弾けた。
ピリッと電流が流れたかのような閃き……。
俺は思いついたことを実行することにした。
「恵ちゃん」
「なっ、なんですかっ……」
振り返るとそこには幼い身体の本物の恵ちゃんの姿があった。
顔を真っ赤にし、目に涙を浮かべ半べそになっていた。
「悪い……」
俺はそういうと恵ちゃんをぎゅっと抱き寄せた。
小柄で軽い恵ちゃんは俺の腕に簡単に引き寄せられて俺の胸の中にすっぽりと収まる。
「……はわわ。な、なんですかっ?」
「いいから。そのまま大人しくしててくれ」
恵みちゃんは抵抗しなかった。
俺の腕に包まれてされるがままに静かにしていた。
「な、なにやってんのよ。そっちの方がいいのかしら? ええっ? ……も、もしかして加茂くんて、……ロリ?」
「ふぉふぉふぉ。これは意外な展開じゃのう。まさか未成熟の方が良いとはのう」
呂姫ちゃんと集子ちゃんが見当違いなことを言っている。
だが、俺はそれでも恵ちゃんを手放さない。
「俺は偽物は嫌なんだ。本物の方がいいんだ」
そうなのだ。
あの成長した俺の完全なる好みの恵ちゃんは偽物だ。
本物の恵ちゃんの意思も許可もなく、勝手にこの空間が作った幻なのだ。
だったらそんなものに心を動かす訳ににはいかない。
「……まあ、確かに加茂くんの言う通り偽物よね。私のも金尾集子のもダイキチーナも、そして神子恵のも偽物ね」
「ふぉふぉふぉ。言われてみればそうじゃのう。確かにあれらはコピーじゃのう」
恵ちゃんは俺に言われた通りに大人しくしていた。ただじっと静かに抱かれていたのだ。俺は小柄な恵ちゃんの髪の毛をなでる。
するとほんのりと良い香りがした。
それだけで俺の気持ちは落ち着く。今まで高ぶっていた変な気持ちが徐々に収まってきたのだ。
「もう大丈夫だ。俺は平気だ」
「……な、なら良かったですっ。……ちょっと恥ずかしいですけど、私も気分が落ち着いてきたのですっ」
俺はそっと恵ちゃんを離した。
俺から離れた恵ちゃんは俺を見上げてくる。
そこにはいつもの、ちょっと間の抜け方に愛嬌がある恵ちゃんの姿があった。
「ああっ、消えていくわよ!」
「ふぉふぉふぉ。消えていくのう。と言うことはこれでクリアかのう」
呂姫ちゃんと集子ちゃんの言葉で俺は振り返る。
するとそこにいる全裸の呂姫ちゃん、集子ちゃん、ダイキチーナ、そして成長した恵ちゃんのそれぞれのコピーたちの輪郭が徐々にぼやけているのがわかった。
そして砂のような粒になり風に攫われるかのようにだんだんと姿を消していくのが見えたのだ。
本物の方がいいのです。(`・ω・´)∩
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私の別作品
「勇者パーティを追いかけて_~転倒魔法しか使えません~」連載中
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。