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27話 食糧問題とあずきです。

この物語は毎話毎話が短いです。

それは4コマ漫画のようなテンポの良さ、余韻を全面に打ち出しているからです。

……決して、私の手抜きではありません。

……きっと。




 

 

 そう言った恵ちゃんは、俺たちを見回す。




「あずきが残っていますっ。

 みんなあずきだけ残していますっ」




 見ると確かにそうだった。

 俺はバーガーだけを引っ張り出して食べたのだが、

 あずきにはどうしてもそれから手が出なくてトレーの上の包み紙に残っている。

 そして河合さんも澤井さんも新井も同様だったのだ。




「……でもなあ。

 甘いしなあ」




 俺はぽつりとつぶやいた。




「あずきはやっぱり和菓子だし、

 バーガーにはちょっとね」




 河合さんも俺同様にグチをこぼす。

 見ると澤井さんも新井も同じように、

 どうでもいいという顔をしていた。




「ダメですっ。いいですかっ?

 このあずきができあがるまで、

 どれだけの苦労があると思っているんですかっ? 


 あずきを育てた人だけじゃないんですっ。

 あずきを加工する人、それを運搬する人、そしてこのお店の人、

 そういう人たちの血と汗と涙が全部このあずきに凝縮されているんですっ……」




 恵ちゃんの話は続いた。

 飽食の先進国を支えている飢えた途上国の食糧事情。

 そして低賃金で働く現地の人から始まって、

 現地の医療事情、そして乳幼児の死亡率、

 はたまた進学率の低さが識字率と比例していることまで、事細かに熱く語ったのである。




「……ごめんなさい。

 私、食べるわ」




 まず最初に澤井さんが根を上げた。




「ぼ、僕も食べるから」




 新井も落ちた。




「食後のデザートと思えば、

 ちょうどいいしね」




 河合さんも陥落した。




「……大吉さんは、

 食べないんですかっ?」




 いつまでも降参しない俺に業を煮やしたようで、

 恵ちゃんが見上げてくる。




「俺か? 

 ……お前にやるよ」




 俺はさらりと切り返した。

 俺は甘い物はあまり好きじゃない。




「な、なんですとっ?」




 恵ちゃんが、ぐぐぐと俺を睨めつける。

 だが俺だって負けてない。




 確かに途上国の食糧事情は問題だが、俺は俺の食べ物を他人に譲ると申し出たのだ。

 別に悪い話とは思えない。




 すると恵ちゃんが、

 いきなりニヤアと笑顔を見せた。




「なるほど、それなら私にも考えがありますっ。

 ……あ、大吉さん、足元に一万円札がっ!」




「えっ?」




 俺はとっさに足元を見た。

 だがそこにはなにも落ちてない。




 ……やられた。

 俺はだまされたことに気がつく。

 そして恵ちゃんを見ようとした。




 そのときだった。




「かかりましたねっ。えいっ」




 恵ちゃんの手が伸びた。

 そしてトレーの上のあずきを掴むと、俺の口へ無理矢理突っ込んだのだ。




「ふえっ」




 俺は驚いてしまって、

 よく噛まずに飲み込んでしまう。

 口中に甘さが広がった。なんだかもさもさして気色悪い。




「な、なにしやがるんだっ!」




 俺は叫んだ。




「へっへっへ。

 よく味わってくださいねっ」




 恵ちゃんはそう口にすると得意気に笑う。

 俺はしてやられたと思ったが後の祭りだった。





 


よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。


私の別作品

「生忌物倶楽部」連載中


「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み

「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み

「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み

「墓場でdabada」完結済み 

「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み

「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み

「空から来たりて杖を振る」完結済み

「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み

「こころのこりエンドレス」完結済み

「沈黙のシスターとその戒律」完結済み


 も、よろしくお願いいたします。


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