260話 豹変なのです。
基本一日置きの更新(18時)とさせて頂きます。
どうぞよろしくお願いいたします。
先頭に立つ1匹に手を伸ばした。
するとその柴犬コボルトは目を細めて頭を突き出してくる。
まるで撫でてくださいと言わんばかりだ。
「……かわええ」
俺はそっと手を伸ばす。
そして頭に指先が触れる。
そのときだった。
「ガウッ!」
いきなり歯をむき出しにしてそのコボルトは俺の手を噛もうとしたのだ。
俺は慌ててとっさに手を引く。
そのためコボルトの噛みつきは空振りに終わる。
「……な、なんなんだっ?」
「「「「「ウウウゥゥ~!」」」」」
辺りを見るとすべてのコボルトが目つき鋭く威嚇の声を上げていた。
牙をむき出しにして敵意丸出しの視線を俺に向けてくる。
もはやそこには柴犬の仔犬のかわいい面影は一切ない。あるのは獰猛な敵意だけで、見た目も凶悪な狼のような顔つきになっている。
「大吉さんっ! 危険ですっ」
「加茂くん、一旦下がって!」
「ふぉふぉふぉ。剣呑じゃのう」
俺はアサルトライフルを身構えたまま数歩後ろに下がり続ける。
すると背中を手で押さえられた。
「大吉さん。戦闘準備ですっ」
どうやら恵ちゃんのようだった。
俺が元の位置に戻ったので、背中を押して教えてくれたようだ。
「あ、ありがとう」
そう言った俺は安堵の声を出して振り返る。
すると大変なものを見てしまった。
三女神たちはすでに武器を身構えていたので胸がオープンになっていたのだ。
恵ちゃんの膨らみ始めのささやかな胸。
呂姫ちゃんのたわわで白い胸。
集子ちゃんの白磁のような豊かな胸……。
……う、ぐぐぐ。い、いかん理性が……。
「「「キャ~ッ!! こっち見ないでって言ったでしょっ!!」」」
「す、すまん。……ついうっかり」
もちろん俺にその気はなかったのだ。
コボルトの態度が豹変してしまったことで、振り返らないという約束をすっかり忘れてしまっていただけなのだ。
「と、とにかく戦いますよっ」
「そうね。すっかり外見に騙されたわ」
「ふぉふぉふぉ。ずる賢いのう」
見るとコボルトたちは唸り声を上げながら、ジリッジリッと距離を詰めてくる。
おそらく多分、一飛で攻撃できる間合いを測っているんだろう。
「完全に攻撃モードだな」
「私たちを騙していたんですねっ。ひどいですっ」
「そうね。私もかわいいと思ってしまったもの」
「ふぉふぉふぉ。見た目によらず危険じゃのう」
俺たちも完全に攻撃モードだ。
俺は先頭の1匹。つまり俺を噛もうとしたコボルトにアサルトライフルで狙いを定める。
振り返られないので確認はできないが、恵ちゃんはショットガン、呂姫ちゃんは両手に片手斧、そして集子ちゃんは手榴弾を身構えているだろうことはわかった。
敵意むき出しなのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「勇者パーティを追いかけて_~転倒魔法しか使えません~」連載中
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。