26話 あずきバーガーの味です。
【毎日昼の12時と夕方の18時に更新します】
この物語は毎話毎話が短いです。
それは4コマ漫画のようなテンポの良さ、余韻を全面に打ち出しているからです。
……決して、私の手抜きではありません。
……きっと。
それから俺たちはテーブルに着いた。
「おいしいですっ!」
恵ちゃんは、
ひとくちバーガーをかじるとそう叫んだ。
それはそれはうまそうな顔つきで、
笑顔の口の周りにはソースがいっぱい付いている。
ちなみに恵ちゃんが食べたのは新作のあずきバーガーだった。
もちろん俺が奢ったやつだ。
「……神子さんには悪いけど、
私にはちょっと微妙だな」
河合さんが、
一口かじったあずきバーガーを見ながらそうつぶやいた。
「だな。
俺もそう思う」
俺も河合さんと同意見だった。
確かに味は悪くない。
ちょっと辛めのソースで味付けされた牛肉のバーガーの上に、
堅く茹でられた甘めのあずきが乗っている。
「甘さと辛さのハーモニーを味わうっていうのが、
コンセプトみたいね」
澤井さんも同じくあずきバーガーを食べている。
だけど半分だけ食した後にバーガーをトレイに戻し、
ウーロン茶を口にしたことから、俺や河合さんと同じ感想を持ったようである。
「うーん。
失敗だったかな」
気がつけば、
どうでもいい存在の新井までもが同じ意見を口にしていた。
俺はこいつまでもがあずきバーガーを頼んでいたとは知らなかった。
……どうでもいいからな。
「そんなことないですっ!
あずきバーガー、最高じゃないですかっ!」
恵ちゃんは、
俺たちの反応に不満の様子だった。
「お前はバーガー自体が初めてだろうがっ」
「はいっ。
でも最高なんですっ。こんなの食べたことないですっ」
俺は恵ちゃんの味覚を疑いたくなった。
こんな……、甘いのか辛いのかわからないようなゲテモノを、
最高と称する舌はどうかしているに違いない。
「ねえ、
神子さんはバーガーを食べるのは初めてって言ってたよね?
普段はなに食べてるの?」
すでにあずきバーガーを放棄して、
仕方ないって感じでポテトに手を伸ばしている河合さんがそう尋ねてきた。
「普段ですかっ?
……うーん、お米とか塩とか」
「うわっ。
極貧っ! それマジ?」
河合さんがのけぞった。
俺はあわてた。
恵ちゃんが言ったのは神棚のお供え物だとわかったからだ。
「こ、こいつはシンプルな味が好きなんで、
ふりかけ代わりに塩をご飯にかけるんだ」
「あ、それわかるわ。
私も塩おにぎり好きよ」
澤井さんがそう言った。
確かにそれはコンビニで売られている。
すると河合さんも新井も頷くのが見えた。
俺はそれを見て安堵した。どうやら今度もうまくごまかせたようだ。
「……じゃあ、
そろそろ買い物に行くか」
それから少しして俺はそう提案した。
元々俺たちはバーガーショップに寄るために、
放課後道草を食っている訳じゃない。
本来の目的は明日からの林間学校に備えての買い物だからだ。
「あ、そうね。
そろそろ行きましょうよ」
澤井さんがそう答えて立ち上がった。
するとそれにつられた感じで河合さんも新井も立ち上がる。
「ちょっと待ったっ」
恵ちゃんだった。
両手をテーブルにバンッとついて俺たちを見上げたのだ。
「みんなまだ食べ終わっていませんよっ」
「……食い終わっただろ?」
俺はそう答えた。
「違いますっ」
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「生忌物倶楽部」連載中
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。




