236話 先に出てきたのです。
基本一日置きの更新(18時)とさせて頂きます。
すみませんが、どうぞよろしくお願いいたします。
「どんなメニューがあるんだ?」
「きつねうどんとか山菜そばとか普通ですねっ」
「……ちょっと待って。火山うどんとか台風そばとか変なのもあるわよ」
見るとガラスケースの下の方に呂姫ちゃんが言う通りのメニューがあった。
蝋細工で再現されている火山うどんは中央に噴火している赤唐辛子で作られた火山があり麓はうどんだった。そして台風そばは蕎麦が強風に煽られたように宙でぐるぐる渦巻いている状態になっている。
「火山うどんと台風そばは却下だな。まともな食事に思えない」
「そうですねっ。私はもっと普通のものでいいですっ」
「臥留子のことだもの。変なメニューは冗談のつもりじゃなくて本気でおかしなものを出しそうよ」
なので俺たちは普通のメニューを選ぶことにした。
俺はたぬきそば、恵ちゃんはきつねうどん、呂姫ちゃんは鴨南蛮そばだ。
そしてガラス戸を開けて店内へと入った。
そこはいわゆる普通の蕎麦屋だった。
カウンター席とテーブル席があって、10人も入ればいっぱいになりそうな小さな店だ。
そして誰もいなかった。
お客さんはもちろん店員さんの姿もない。
「誰もいませんっ。どうしますっ?」
「とりあえず座るか」
「そうね、じゃあいちばん奥のテーブル席に座りましょう」
そして俺たちはテーブル席に座るのであった。
恵ちゃんの横に呂姫ちゃんが座り、俺はその正面である。
「すみませーんっ。注文いいですかっ」
恵ちゃんが大声でそう告げた。
だが返事は返ってこない。
しーんと静寂が支配する。
「……ホントに蕎麦屋なのか? 閉店してるんじゃないのか?」
「変ですよねっ。店員さ~ん、いませんか~っ」
しかし返事はなかった。
だが、そのときだった。
「うおっ! 恵ちゃんの前にいつの間にかきつねうどんがあるっ!」
そうなのだ。
本当にいつの間にか突然にホカホカと湯気を立てるきつねうどんが置かれていたのだ。
「おどろきましたっ。ホントに突然に出現ですねっ」
「……それはそれとして、加茂くんのたぬきそばと私の鴨南蛮はまだなのかしら?」
そうだった。
それからしばらく待っても俺の注文と呂姫ちゃんの注文が現れないのだ。
「……恵ちゃん、伸びちゃうから先食べてていいぞ」
「そうよ。私たちのもそのうち来るでしょ」
「……わかりましたっ。ではお言葉に甘えて先にいただきますっ」
恵ちゃんは割り箸を割ってきつねうどんを食べ始めるのであった。
きつねうどんだけが先に出てきたのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「勇者パーティを追いかけて_~転倒魔法しか使えません~」連載中
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。