233話 一万円札があったのです。
基本一日置きの更新(18時)とさせて頂きます。
すみませんが、どうぞよろしくお願いいたします。
そして俺たちは階段を登り切った。
するとそこは板張りでだだっ広い部屋だった。
ただし薄暗くてよく確認ができない。
「なにも……ないな」
俺は暗がりの中で目を凝らす。
「あ、なにかありますよっ」
ところが恵ちゃんが前方になにか見つけたようだ。
「なにかしら? 大きいわね。長持のようね」
呂姫ちゃんがツカツカとそれに歩み寄りながら指摘する。
それは大人がひとり横になって入れるような大きな木製の箱だった。
確かに長持のようだ。
「……どうしますっ? 開けてみますかっ?」
「うーん。これは他人の持ち物だからな。止めとくか?」
「でも、なにかの手がかりが入っているかもしれないわ」
呂姫ちゃんがそう告げる。
確かにそれも一理ありそうだ。
「じゃあ、開けてみますねっ」
そう言った恵ちゃんが長持の蓋に手をかけて開けたのだった。
「……なにか入ってますね。……紙?」
「だな。なにか書いてあるのかもしれないぞ」
「見てみるわね」
呂姫ちゃんが手を伸ばし長持の底に置かれてあった一枚の紙を取り出した。
「……これお札ですねっ。どうしてでしょうっ?」
「そうだな。なんの意味があるんだ?」
その紙は一万円札だった。
長持の底にたった一枚だけ一万円札が置かれてあったのだ。
「持ち主。……つまり臥留子のへそくり?」
呂姫ちゃんが戸惑い顔で俺たちを見る。
「……どうかな? それはわからん。単に置き忘れってこともあるしな」
「そうですねっ。ホントならこのまま手に入れたいんですけど、ここは臥留子ちゃんの家なので、きっと彼女のものでしょうっ。なのであきらめましょうっ」
恵ちゃんは呂姫ちゃんの手から一万円札を受け取ると元の場所、つまり長持の底に置いたのであった。
「あれ? あそこに階段があるわ」
呂姫ちゃんが部屋のいちばん奥を指さした。
見ると確かに傾斜のきつい木製の階段があった。
たった今登って来たものと同じタイプのものだ。
「まだ上の階があるんですねっ」
「行ってみるか」
「それしか道はなさそうね」
俺たち3人はその階段を登るのであった。
「……また同じですっ」
登り切ったところにはまた板張りの部屋があった。
部屋の真ん中辺りにさっきと同じような長持が置いてあったのだ。
「さっきと同じ作りだな。また長持を調べるか?」
「そうね。いちおう調べてみましょう。今度こそなにか手がかりがあるかもしれないわ」
そうして俺と恵ちゃん、呂姫ちゃんの3人は長持の蓋に手をかけるのであった。
謎の一万円札なのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「勇者パーティを追いかけて_~転倒魔法しか使えません~」連載中
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。