224話 小さくなるのです。
基本一日置きの更新(18時)とさせて頂きます。
すみませんが、どうぞよろしくお願いいたします。
「あそこってどこですかっ?」
「ほら、あそこよ。根本の幹にコブが出ている木があるでしょ? そこよ」
呂姫ちゃんが道沿いに生えている一本の樹木を指さして言う。
確かに根本近くの幹に大きなコブがあるな。きっとあれだろう。
「あれですねっ」
どうやら恵ちゃんも見つけたようだ。
「そうなのよ。あの木のコブの裏になにか見えた気がしたのよね」
呂姫ちゃんが木に近づきながら言う。
「じゃあ調べてみましょうっ」
恵ちゃんもそう言うので俺は彼女らについて行く。
……そこには祠があった。
古くて小さい石造りの祠だった。相当古いもののようで石は削れ摩耗していて苔むしていた。
「祠があったんですねっ」
「じゃあ、山井臥留子はここかしら?」
考えてみれば神様なのだ。
祠を家にしていても、なんの不思議もない。
そのときだった。
恵ちゃんのスマホに着信があったのだ。
「……あ、臥留子ちゃんからですっ」
「なんだって、どういうことだ?」
「私たちがここに到着したのがわかったそうですっ」
「ってことは、この祠が臥留子の家ってことね?」
「そうですっ。家に入ってきて欲しいそうですっ」
なんてこった。
確かに祠だから神様が住んでいてもおかしくないが、こんな小さな祠に俺たちが入れるのか?
「なら仕方ないわね。神子恵も加茂くんも行くわよ」
呂姫ちゃんがそう言う。
「行くって、どう行くんだ? 俺はこんな小さな祠には入れないぞ」
「それなら問題ありませんっ。私がなんとかしますっ」
「なんとかって、どうすんだ?」
俺にはさっぱり意味がわからなかった。
だって両手で抱えられそうに小さな祠だぞ?
この中に入るってのが意味不明だ。
「では、行きますっ」
そう叫んだ恵ちゃんは印を切りと両手をゆらゆらと揺らしたのだ。
「う、うおっ~っ!!」
突如、俺の身体に異変が起きた。
なんだか全身がむず痒い感じになったかと思うと視界が徐々に低くなっていく。
「……って、なんだこりゃ~っ!」
今、俺の眼の前には巨大な石造りの祠がそびえ立っていた。
そして見上げる樹木はさっきよりずっとずっと頭上高くある。
そうなのである。
俺の身体が小さくなってしまったのだ。
祠との大きさを比較すると、たぶん身長10センチくらいだろう。
「さあ、これで大丈夫ですっ」
見ると俺と同じく小さくなった恵ちゃんがいた。
「待って。私も小さくなるから」
頭上から降ってくる声に振り返るとそこには巨大な美少女がいた。
呂姫ちゃんだ。
そして呂姫ちゃんも怪しげな身振りをする。
すると徐々に身体が小さくなり、俺たちと同サイズにまで小型化したのであった。
……まあ、考えてみれば恵ちゃんは俺の部屋で神棚で寝るために身体を小さくしたもんな。神様たちなら、こんなことはお手の物か。
俺はこうして無理矢理にでも納得するのであった。
小さくなってしまったのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。