223話 見つからないのです。
基本一日置きの更新(18時)とさせて頂きます。
すみませんが、どうぞよろしくお願いいたします。
坂道を登り切ると風景が変わった。
そこは高台になっていて、眼下一面が住宅地だった。
ベッドタウンとして造成されたマンション、アパート、一戸建ての住宅がみっしりと並んでいた。
「見晴らしいいな」
「私も初めて来ましたっ」
「こんな場所があるなんて意外ね」
俺と恵ちゃん、呂姫ちゃんは崖下から吹き上げる気持ちいい風を受けながら、目の前に広がる風景の感想を述べるのであった。
そのときである。
「あれっ? おかしいですねっ?」
「どうしたんだ?」
「地図を見てるんですけど、どうも臥留子ちゃんの家を通り過ぎちゃったみたいなんですよっ」
「ええ? 坂道の途中に家なんかあったかしら?」
「そう言えばなかったな」
そうなのだ。
坂道は左右ともに林になっていて、人家など一軒もなかったと思う。
「戻った方がいいのかしら?」
「そうだろうな」
「ひょっとして脇道とかあったのかもしれませんねっ」
俺たち3人は元来た道を引き返す。
つまり坂道を下るのだ。
そしてしばらく来た。
すると見覚えのあるコンビニが見えた。
「あれれっ? また通り過ぎちゃいましたよっ」
スマホの地図アプリを見た恵ちゃんがそう口にした。
「変だな」
「変よね。家も脇道もなかったわよ」
俺と恵ちゃん、呂姫ちゃんは互いに顔を見回した。
「もう一回登ってみよう」
「そうですねっ」
「それしかないわよね」
俺と恵ちゃん、呂姫ちゃんは首をひねりながら再び坂道を登り始めるのであった。
そしてまた同じことになる。
坂道を登り切ってしまい、見晴らしのよい高台の上に出てしまったのだ。
風は気持ちよく吹いているものの、頭上の太陽からの熱がすごくて俺たちは汗びっしょりになってしまっていた。
「……なんもなかったよな?」
「なかったと思いますっ。家も脇道もなかったですっ」
「まさかツリーハウスで木の上にあるとかかしら?」
呂姫ちゃんがとんでもないことを言うが、それなら見落としている可能性もあるな。
「もう一度だ。もう一度だけ坂を下って探そう」
「そうですねっ。それで見つからなかったら臥留子ちゃんに問い合わせますっ」
「もう迎えに来てもらいたい気分よね……」
俺たちはこれが最後とばかりにまた坂道を下り始めた。
周囲を見るのはもちろんだが、呂姫ちゃんが言うツリーハウスの可能性も考えて上も見ながらでの捜索だ。
「……やっぱりないぞ。もうコンビニが見える」
俺は坂道の麓が見えたときにそう発言した。
「もう臥留子ちゃんに問い合わせますっ。仕方ありませんっ」
恵ちゃんももうヤケになっているようだ。
そんなときだった。
「……ねえ、あそこになんかないかしら?」
呂姫ちゃんが林の樹木の一本を指さしながら、そんなことをつぶやくのだった。
どうしても見つからないのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。