221話 お願いしなければダメなのです。
基本一日置きの更新(18時)とさせて頂きます。
すみませんが、どうぞよろしくお願いいたします。
俺たちの登山が終わった数日後のことである。
俺は神武寮の自室で夏休みの宿題をしていた。
もちろん同室の恵ちゃんもいっしょだ。
俺たちはちゃぶ台に向かい合って教科書、ノートを開いている。
「がああ。……わからん!」
俺は両手で頭を掻きむしる。
「ったく。なんでこんなに難解なんだ?」
俺はすっかりやる気をなくしてしまい、そうぼやくのだった。
「なにがわからないんですかっ?」
「数学だよ。数学」
「私、割と得意ですよっ。どこがわからないんですかっ?」
恵ちゃんが身を乗り出してきた。
「ここ。ここがさっぱりわからん。教科書を見てもノートを見てもさっぱりわからないんだ」
「ああ、これですかっ? これは、えーとっ」
そう言った恵ちゃんは俺から教科書を受け取るとぱらぱらとページをめくる。
「ほら、ありましたよっ。この公式を使うと解けますよっ」
「これか? これを使うのか……。でも、お前よくわかるな?」
「わかりますよっ。だってこれ6月3日の3時間目の授業で習ったじゃないですかっ」
「……なんで日にちまで憶えてるんだ? 驚愕だ」
「私、記憶はいい方なんですっ」
そんなこんなで宿題は少しずつなのではあるが、進むのであった。
■
「お。……PCショップの店長さんからメールだ」
「店長さんですか? またお店でデモプレイしてもらいたいんでしょうかねっ?」
そうなのだ。
俺たちはPCショップでデモプレイのアルバイトをしていた。
だが、一段落ついたことでしばらくお休みになっている。
「……違うな。お、頼んでいたゲーミングPCが予定より早く入荷したんだと」
「そうなんですかっ? 良かったですねっ」」
「ああ、正直嬉しい。これはすぐに受け取りに行きたいな」
「じゃあ行きますかっ?」
「そうだな。早く欲しいし」
そう言って俺は立ち上がると着替えを始める。
そのときだった。
「待ってくださいっ。もしかして大吉さん、そのまんま行くつもりですかっ?」
「ん? なにかあるのか?」
「おおありですっ。お店でバイトしたのもゲーミングPCを買ったのも大吉さんじゃなくて、ダイキチーナちゃんなんですよっ」
「うおっ。そうだった。このままじゃ別人じゃないか」
「そうなんですっ」
「どうしよう?」
「ダイキチーナちゃんになるには臥留子ちゃんに頼まないとダメですねっ」
「ああ、そうか。連絡取ってくれるか?」
俺は疫病神:山井臥留子ちゃんの連絡先を知らないので恵ちゃんにお願いした。
「わかりましたっ」
そう返事をした恵ちゃんは自分のスマホを手にする。
が、少し考え顔だ。
「どうしたんだ?」
「服のことですっ。大吉さん、女性モノの服持ってないですよねっ?」
そうだった。
いつぞや買ったキャミソールがあった気がするが、上だけだ。下の服は持ってない。
「だとすると呂姫ちゃんにもお願いしないとダメですねっ」
服の着替えるには邪神:辻神呂姫ちゃんの神力を利用しなければならないか。
なんだか面倒くさい話になってきたな。
面倒くさい話になってきたのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。