217話 百円玉しかなかったのです。
基本一日置きの更新(18時)とさせて頂きます。
すみませんが、どうぞよろしくお願いいたします。
俺は財布から五円玉を取り出した。
御縁があるし丁度いいだろう。
「はわわ。百円玉しかありませんっ」
横を見ると恵ちゃんだった。
どうやら適当な小銭がなくて百円玉しかなかったようだ。
「豪勢だな」
「うう、仕方ありません」
「だけど百円玉なら俺の五円玉よりご利益があるかもしれないぞ」
「なるほど。そういう考え方もありますねっ」
俺は適当に言っただけなのだが、なぜか恵ちゃんは納得している。
まあ、納得したならそれでいいだろう。
そして俺たちはそれぞれお賽銭を賽銭箱に入れて手を合わせた。
「……大吉さんに早く子供が生まれますように」
不穏な願いが聞こえてきた。
もちろん恵ちゃんだ。
「い、いったいなにを願ってるんだ。冗談じゃねえぞ」
俺は手刀を落とそうとした。
だが本堂の前と言う場所を思い出して自重した。
それから俺たちはいろんなお土産やら食事やらが売られている門前町に繰り出した。
「あんまり変なお願いごとをするな」
「どうしてですかっ。私は子宝の神様ですよっ。当然の願いですっ」
どこまでもマイペースな恵ちゃんだった。
「ねえ、なにか食べていかない?」
「そうね。そういえばお腹がすいたわ」
河合さんと澤井さんだ。
「そうですねっ。なにか食べましょう」
この門前町の商店街には店の外にベンチとテーブルがたくさん置かれていた。
どうやら好きなものを買って、好きに座って食べていいようだ。
つまりフードコートと同じだな。
なにか買ってくると言って河合さんと澤井さんと新井が店の方へと向かった。
残りの俺、恵ちゃんは席取りして待つことにした。
「あ、あの席空いてますよっ」
「ホントだ。あそこにしよう」
俺たちは恵ちゃんが見つけた席を確保した。
展望台にも近く見える風景も良いベンチだった。
ベンチには当然テーブルもあり、席は片側に四名、向こう側と合わせて八名は座れる十分な広さだった。
そして待つことしばし。
「おまたせ」
「買ってきたわ」
河合さんたちが戻ってきた。
手にはお盆を持っており、いくつかお皿が乗っている。
「串団子と五平餅とお茶だよ」
「ちゃんと人数分買ってきたわ」
そう言って河合さんと澤井さん、新井が向こう側に座った。
こちら側は俺と恵ちゃんがすでに座っているのでそうしたようだった。
恵ちゃん、大盤振る舞いなのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。