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216話 本堂の前でなのです。

基本一日置きの更新(18時)とさせて頂きます。

すみませんが、どうぞよろしくお願いいたします。


 

「すごい人だなあ……」




 俺は山頂、つまり境内に到着したとき、そのあまりの人の多さにびっくりした。




「登山道にはほとんど人と出会わなかったのに不思議ですねっ」




 そうなのだ。

 俺たちはほぼ一本道の登山道を登って来たのだが、その道ではほとんど人と出会わなかったからだ。




「ケーブルカーで麓から一気に来ちゃう人も多いしね」




「なるほどな。なにも歩いて登らなくてもいい訳だ」




「ただ単に観光だけする人だったらケーブルカー一択でしょう」




 俺はそう説明する河合さんに意見に納得した。




「それに登山道も他にもいくつかあるわ」




「そうなのか?」




 知らなかった。

 俺たちは麓の駅からすぐに登山道に入ったので、それしか道はないかと思っていた。




「むしろ私たちが登って来たのが一番初心者向けで、中級者以上の人たちは別の道を使ったのよ」




 澤井さんがそう教えてくれた。




 俺たちは山頂の展望台に向かった。




「うわあ、やっぱりさっきの見晴台よりも景色がいいですねっ」




「そりゃ、こっちの方が高い位置にあるからな」




 そうなのだ。

 やはり麓の街並みと遠くの都会のビル群が見えるのだが開放感が断然こちらの方が良い。そして俺たち五人はしばらく景色を堪能した。




 ■




「ねえ、せっかくだからお参りもしようか?」




「ええ、そうね。せっかくだしね」




 河合さんと澤井さんがそう言う。




「加茂くんたちも行く?」




「私たちは行くけど、どうするのかしら?」




 河合さんたちが俺と恵ちゃんを見て言う。




「せっかくだから俺はお参りしようかな? 恵ちゃんはどうするんだ?」




「私もしますよっ。せっかくですしっ」




「……おい、神様が仏様を拝んでもいいのか?」




 俺は小声で恵ちゃんに話しかける。




「いいんですっ。せっかくなんですから細かいことは気にしないでいいんですっ」




 どうやら節操がないらしい。

 他宗教の神でも構わないようだ。




 そして俺たちはお寺の賽銭箱の前に立っていた。




「私、なにお願いしようかな?」




「恋愛とかどうかしら?」




「いいよお。まだ好きな人いないし」




 河合さんと澤井さんがガールズトークを始めてしまった。

 俺はそれには関わらず、いそいそと財布からお賽銭を用意するのであった。




他宗教でも気にしないのです。(`・ω・´)∩



 


よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。



私の別作品


「生忌物倶楽部」連載中



「夢見るように夢見たい」完結済み


「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み


「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み


「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み


「墓場でdabada」完結済み 


「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み


「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み


「空から来たりて杖を振る」完結済み


「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み


「こころのこりエンドレス」完結済み


「沈黙のシスターとその戒律」完結済み



 も、よろしくお願いいたします。

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