215話 また気配がしたのです。
基本一日置きの更新(18時)とさせて頂きます。
すみませんが、どうぞよろしくお願いいたします。
それからしばらくして俺たちは登山を再開した。
見晴台を離れ元の道の戻って坂道を登り始めたのだ。
「……ったく大吉さんは頑固ですっ」
「また蒸し返すのか? 同意がない行為はやめろ」
恵ちゃんと俺はそう言い合う。
「ねえ、さっきからなにを話しているの?」
「そうよね。私たちには意味がわからないわ」
河合さんと澤井さんだ。
二人はさっきの見晴台で俺に抱きついたことをやっぱり覚えていないのだ。
神力、おそるべし……。
「な、なんでもないさ」
「そうですっ。気にしないでくださいっ」
俺と恵ちゃんはそう返答するのであった。
■
それからしばらく時間が経過したときだった。
見晴台から山登りを再開してから一時間以上過ぎていた。
「石段になったな」
「そうですねっ」
恵ちゃんが後方を振り返り言う。
「さっきまでの土の道がなくなりましたっ」
「そろそろ頂上が近いんじゃないかな?」
「そうね。山の上はお寺とお店があるから、境内に入ったのかもしれないわ」
河合さんと澤井さんがそう言った。
見ると新井も頷いている。
そうなのだ。
この中尾山はそもそもがお寺なのだ。
山門が近くなって道が石段になった可能性がある。
「あっ、見てくださいっ。門がありますよっ」
恵ちゃんが登る先を指さした。
「ホント。やっぱり頂上が近いんだね」
「時間的にそろそろと思っていたわ」
河合さんも澤井さんも山門を見て言う。
そんなときだった。
「大吉さん。……また気配がしますっ」
小声で恵ちゃんが話しかけてきた。
「気配? なんの気配だ?」
俺はなんのことだかわからなので辺りをキョロキョロと見回す。
「……神様の気配ですっ。一瞬ですが感じましたっ」
「ここが神社なら神様の気配があってもおかしくないが、ここはお寺だからなあ」
そうなのだ。
お寺なので神がいるとは思えないのだ。
「きっと頂上にいるんですっ。大勢の人の気配もするので紛れ込んでいるのかもしれませんっ」
恵ちゃんはそう言うのであった。
しばらく石段を登り、山門をくぐり、またしばらく歩くと頂上が見えてきたのだった。
神様の気配がしたのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。