214話 やっぱり神力なのです。
基本一日置きの更新(18時)とさせて頂きます。
すみませんが、どうぞよろしくお願いいたします。
「……な、な、な」
なんなんだ? いったい?
俺は挙動不審者のようにオロオロとしてしまった。
今俺の右腕にはかなりボリュームのある河合さんの胸が押し付けられている。
そして左腕には、ちょっとささやかだが形の良い澤井さんの胸が密着しているのだ。
……柔らけえ。う、ぐぐぐ。
俺は深呼吸をした。
なんどもなんどもした。
そうしないと下半身の一部が反応してしまいそうだからだ。
「ねえ? どうよ?」
「ねえ? どうかしら?」
「ど、どうって……」
感想なんか素直に言える訳がない。
この状況で平常心を保てる高校生男子なんぞいる訳がないのだ。
気持ちいいです、って素直に言えばいいのか?
いや、駄目だ、駄目だ。
そんな欲望に満ちた答えなぞ言える訳がない。
「す、すみません。二人とも、ちょっと離れてくれませんか?」
俺はそうお願いする。
だが、
「ええ、やだよ。ちゃんと答えるまで離さないから」
「嫌よ。しっかり返答して欲しいわ」
そう言って河合さんも澤井さんも一層力を込めてしがみついてくるのだ。
これじゃどうしようもない。
頭がどうにかなりそうだ。
俺はもしやと思って恵ちゃんを見た。
すると、当たりだった。
俺と目線が合うと恵ちゃんは急にそっぽを向いてとぼけたからだ。
これは間違いなく恵ちゃんの神力によるものだろう。
なら対応可能だ。
「ちょっと、ごめん」
俺はそう言うと力いっぱい両腕を振った。
すると勢いに負けて河合さんと澤井さんが離れた。
本当なら女子相手にこんな乱暴なことはしない。
だけどこれは恵ちゃんの神力なのだ。
なので、二人とも今の自分の状態のことなんか覚えている訳がないからだ。
俺は自由を取り戻すと、ツカツカと恵ちゃんに歩み寄った。
「な、なんですかっ!」
恵ちゃんはオロオロと戸惑いだすが、俺は構わず近づいてその頭に手刀を落とすのだった。
「はう。……痛いです」
恵ちゃんは額に両手を当てて涙目になった。
「どうして神力なんか使うんだ? 河合さんも澤井さんにも迷惑だろうが」
「なにを言ってるんですか? 私は子宝の神ですよっ。大吉さんの縁結びがしたいだけですっ」
「本人たちの同意もせずにするな」
「河合さんも澤井さんも彼氏はいないんですよっ。だからいいじゃないですかっ」
「だから同意を確認しろと言っているんだ」
それから俺と恵ちゃんは堂々巡りの問答を繰り返すのだった。
恵ちゃんは懲りないのです。(`・ω・´)∩
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私の別作品
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。