212話 ペースはゆっくりなのです。
基本一日置きの更新(18時)とさせて頂きます。
すみませんが、どうぞよろしくお願いいたします。
登山道は舗装されているところがあったり、むき出しの土で樹木の根っこが這い回っているような場所もあったが、おおむね傾斜は楽で登りやすい。
「ああっ、見てくださいっ。きのこですよっ」
恵ちゃんが道の脇に生えていたきのこを指差す。
「でかいな」
直径五センチ以上もある白いきのこだった。
「でもきっと食べられませんねっ」
「まあ、そうだろうな。食えるきのこの判別はプロでも難しいって話だしな」
そんな会話をしながら更に俺たちは山道を登っていく。
次第に体温も上がって汗をかいているが、風が気持ち良いので不快ではない。
「ああっ、見てくださいっ。リスですよっ」
恵ちゃんが脇道にある樹木の枝にいる小さなリスを見つけた。
「ホントだ。よく見つけたな」
「私、割と周りを見ながら歩いているので、よくいろんなものを見つけるんですよっ」
なるほどな、と思った。
さっきもきのこを見つけていたし、よくよく観察すると辺りをキョロキョロとしながら歩いているのがわかる。
「なあ、ちなみになんだが、この中尾山ってどれくらいで登れるんだ?」
俺は前を歩く恵ちゃんに尋ねた。
「そう言えば、私も知りませんね。初心者向けってのは聞いてますけど」
すると先頭を登る河合さんが振り返った。
「だいたい二時間ってとこね」
「私たちは初心者も初心者だからもうちょっとかかるんじゃないかしら?」
澤井さんもそう答えてくれた。
「二時間とちょっとか。それなら頑張れるな」
俺は特に登山が好きという訳なじゃない。
なのであんまり長いと嫌だなと思っていたので安堵した。
二時間少々ならば十分だと思ったのだ。
「ちょっとペース落とすよ」
先頭を歩く河合さんのそう言った。
「今でも結構遅めだと思うけど?」
疑問に思った俺は河合さんに尋ねた。
そうなのだ。
登り坂と言うのもあるんだが、今でも割りとのんびりとした速度で歩いているのだ。
鼻歌でも歌いたい気分なのである。
「山道はね、急ぐと後で疲労が出るのよ」
河合さんのそんな返事が聞こえてきた。
「そうね。急ぐよりもペースを守るのが大事ね」
澤井さんもそんな返事をする。
「そんなもんかね?」
「そうなんじゃないですかっ? 元々初めて登る山ですし、後でバテるのも困りますよっ」
恵ちゃんも河合さんたちに賛成なようで、そんな言葉が返ってきた。
「なるほどな」
俺はみんなに合わせて歩くペースを落とすのだった。
山はバテると大変なのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。