211話 登山の始まりなのです。
基本一日置きの更新(18時)とさせて頂きます。
すみませんが、どうぞよろしくお願いいたします。
「気配を消している? 俺たちに見つからないようにか?」
「わかりませんっ。たまたまかもしれませんし、私の勘違いかもしれませんっ」
恵ちゃんはそう言う。
まあ、神って割りとたくさんいるみたいだし、たまたまの偶然かもしれないな。
俺はそんな風に思うことにした。
そして恵ちゃんだが、じきに感心を失ったようで会話は車窓から見える風景や、これから登る中尾山に関することへと移行していった。
■
そして目的地の駅に到着した。
「着きましたねっ」
「ああ。やっと着いたって感じだ。やっぱり一時間も乗ってるとそれなりに疲れるな」
「なにを言ってるんですかっ。これから山に登るのにもう疲れちゃったんですかっ?」
「ああ、そう言う訳じゃない。単なる気疲れだ。体力を消耗した訳じゃないんだ」
「それなら良かったですっ」
俺たちがそんな会話をしながら改札を抜けたときだった。
「ああ、来た来た」
「時間どおりですね」
そこには河合さんと澤井さんの姿があった。
河合さんはTシャツにパンツ姿でハイキング用のリュックを背負っている。
そして澤井さんはポロシャツとデニムのジーンズ姿でやはりリュックを背負っていた。
「おはよう」
二人の奥から声がしたので注意を向けると新井が立っていた。
影が薄くてぜんぜん気が付かなかったのだが、すでに到着していたようだ。
「おはよう。じゃあさっそく登るのか?」
俺がそう声をかけると河合さんが首を振る。
「簡単なコースだけど一応山道だから、飲み水とか買おうと思って」
「なるほどな。そう言えば俺も持ってきていないな」
そんな訳で駅前にあるスーパーに俺たち五人は立ち寄った。
そしてミネラルウォーターのペットボトルとか道中のカロリー補給になりそうな甘いお菓子なんかを買い込んだのであった。
「じゃあ、行きましょう」
学校でもそうだが、ここでもやはりリーダーは学級委員の河合さんの役割だった。
俺たちはその声に頷いて登山道へと目指したのである。
この日は晴れで夏らしい日差しが地面を照らしていて、暑さに少々参ったいた俺だが、登山道へと入ると一息つけた。
道の両側には背の高い樹木たちが立ち並び大きな木陰を作ってくれているからである。
それに山特有の涼しい風が時折吹いていてくれるのも助かる。
「山に入ると途端に涼しくなったな」
「そうですねっ。やっぱり炎天下での登山だったら辛すぎますっ」
返事をする恵ちゃんは笑顔だった。
いよいよ登山の始まりなのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。