19話 大奥なのです。
【毎日昼の12時と夕方の18時に更新します】
この物語は毎話毎話が短いです。
それは4コマ漫画のようなテンポの良さ、余韻を全面に打ち出しているからです。
……決して、私の手抜きではありません。
……きっと。(´・ω・`)ショボーン。
「簡単な話ですっ。
つまりこの界隈に住む新一年生女子たちの中から
選りすぐったメンバーを神武高校の一年二組に。
……いいえ、一年生全体に組み込み込んでみましたっ!
機会があれば他クラスも見ちゃってくださいねっ」
――ごつん。
「……って、
痛いじゃありませんかっ! うーぅ」
俺のげんこつを食らって、
恵ちゃんは頭を抱え込む。
「痛いじゃないっ!
ってことは本来別の高校に行くはずの女子たちを、
お前はこの高校に入れちまったって訳だろうがっ!」
「そうですよっ」
「開き直るなっ」
俺はため息をついた。
恐るべし神力とやら。
……いったいこの神様はなにを考えているんだ?
すると恵ちゃんは、俺がなにが言いたいのかわかったようだ。
得意気な表情を一層強めて胸を張る。
「開き直りしちゃいますよっ。
私が目指したのは大吉さんのためだけの大奥ですっ」
「な、なんだってえ-?」
俺は驚きでひっくり返りそうになった。
大奥とはかつて将軍のためだけに用意されたハーレムである。
願うのはひたすら子作りで男子を絶やさないのが目的だ。
詳しくは時代劇でも観て欲しい。
「そ、その割には、
男子生徒もたくさんいるじゃないか?」
「当たり前ですっ。
この学校は共学なんですよっ。
大吉さん以外すべて女子ってのは、さすがにためらいました」
「……あ、頭痛くなってきた」
「あ、また保健室ですねっ。
あそこにはベッドがありますからね。
今度はどの女の子と行きますか?
……あ、あ、今のは冗談ですますよっ。はい……」
恵ちゃんが突如うろたえて二、三歩下がった。
もちろん俺がげんこつを構えたからである。
「わかった、わかった。
……とりあえず教室へ戻ろう」
俺は仕方なく、そう提案する。
「イ、イエッサー」
恵ちゃんが、
警戒をほどいて俺に近寄ってきた。
「ったく。
……あのな、一応断っておくけど、
俺は高校生で子持ちになるつもりはないからな」
「えーっ、
なぜですかっ?」
恵ちゃんはがっかりした顔になり、
そう尋ねてくる。
「十代から小作りに励めば、
二十代、三十代、四十代を考えると子供たちの数だけで、
サッカー、……いや、ラグビーチームが作れますのに」
「あ、あのなあ。
……昔じゃないんだぞ。そんなにたくさんの子供がいるかっ?」
「なんでですかっ?
生物本来の役目は子孫繁栄ですよっ。
大吉さんの遺伝子をたくさんの女の子たちが引き継いで、
どんどん産めや育てやで……。
うー、考えただけでワクワクしちゃいますよっ」
「いらんわっ。
そんなにたくさん子供を増やしてどうするんだっ?」
「なぜですかっ。
老後が安心じゃないですかっ?
それだけたくさん子供がいれば、
将来先細りになることは確定している年金問題からも、逃れられます。
ひとりから毎月二、三万円ずつ小遣いをもらえれば、
働かなくても、年金をもらえなくても十分に暮らして行けるじゃないですかっ?
それに孫って可愛いって言うじゃないですかっ。
例えば子供が二十人いれば、孫の数は……」
「いらんわっ。
そんな老後はっ!」
俺はもう一回げんこつを加えてやろうかと思案し始めた。
そのときだった。
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「生忌物倶楽部」連載中
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。