175話 抜きつ抜かれつなのです。
所用により、これからは基本一日置きの更新とさせて頂きます。
すみませんが、どうぞよろしくお願いいたします。
そして一周が過ぎた。
俺、そして秀子ちゃんはそこでアクセルを全開にしていきなり車を急加速させる。
「秀子ちゃん、行くよ!」
「わかった」
すると二台は先行している車たちをゴボウ抜きする。
レースの始まりである。
……速いな。
先行しているのは俺。
だが、その背後にぴったりとつけているのは秀子ちゃんだ。
「やるな」
「これはハイレベルだ」
「見ごたえ十分だな」
「来て良かった」
ギャラリーの方々の反応も良い。
「飛ばすよ」
「うん」
俺は更に加速させる。
するとそれに秀子ちゃんはぴったりとついてくる。
さすが遊戯の神様だけあって腕は抜群だ。
このコースはカーブの多いサーキットだ。
なので直線はあまりないことから、抜くのはどうしてもカーブ中心となる。
俺は先行している車の内側、つまりインコースを取った。
そしてそのまま追い抜く。
すると寸分の違いもないコース取りで秀子ちゃんも抜いて来た。
……やるな。
俺は正直言うとあまり余裕がなかった。
コースは熟知しているし、他のレースカーたちの動きも鈍く感じられ、走らせること自体になんの不都合もない。
だが、秀子ちゃんが不気味なのだ。
俺が取ったコースをなぞるように同じペースで走らせているその動作に、まだまだ余裕があるんじゃないかと思わせるのだ。
そしてホームグランドの長い直線コースに入ったときだった。
俺の真後ろでスリップストリームに入っていた秀子ちゃんのレースカーがフッと横に飛び出したのだ。
そして俺の車を横目に一気に加速すると、俺を追い抜いて走り去る。
「やりますねっ」
「さすがは遊戯秀子」
「……動きに……無駄がない……」
「ふぉふぉふぉ。やりおるのう」
恵ちゃん、呂姫ちゃん、臥留子ちゃん、集子ちゃんがそう感想を述べる。
……やられた。
俺としては一瞬の隙をつかれた大きなミスに後悔していた。
なので、それを挽回するために速度を上げた。
■
秀子ちゃんは速かった。
カーブへのアプローチ速度、コース取りもなにも問題なく最速で走り抜けていく。
そして俺だが、さきほどとは逆で俺が秀子ちゃんのコース取りを真似て同じスピードで通過して秀子ちゃんに置いていかれないように努めている。
その後も俺は走りに徹した。
何度か秀子ちゃんを追い抜ける機会はあったのだが、無理に抜くと車体の姿勢を崩してしまい、またすぐに抜かれてしまう可能性があったことから安全策として追跡に努めている。
(神子恵。提案がある)
突然、秀子ちゃんが念話を飛ばしてきた。話しかけた相手は恵ちゃんだが俺にも聞こえている。
なので他の女神たちにもきっと聞こえているのだろう。
(な、なんですかっ? デモプレイ中なんですよっ)
恵ちゃんがびっくりした様子で返事をした。
(賭けない?)
秀子ちゃんは突然、そんなことを言い出したのであった。
秀子ちゃんはさすがに速いのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。