160話 念話なのです。
【毎日昼の12時に更新します】
「このままゴールを目指すわよ」
呂姫ちゃんがショットガンでゾンビたちを殴打しながらそう言う。
「わかった。このまま進みましょ」
主人公の彼女役の俺は棍棒、主人公の警察官の呂姫ちゃんはショットガン、ときには拳銃を打撲武器としてゴーストタウンの奥へと向かう。
途中にある宝箱やドロップで手に入れた銃器、手榴弾などは俺が使い、呂姫ちゃんはひたすら殴打での戦いだ。
ただ武器は途中で手に入れた斧に変えてある。
やはりショットガンで殴るよりも斧の方が強力だからである。
街は奥に行けば行くほど敵が強くなる。
ゾンビの数も増えるし、そのゾンビたちより一回り大きい中ボスとも言える大型ゾンビが交じるからだ。
「だいぶ敵が強くなってきたけど、平気?」
「そうね。まだ行けそうよ」
俺が尋ねると呂姫ちゃんから心強い返事がある。
「なんとかなりそうですねっ」
「……最初は……どうなるかと……」
「ふぉふぉふぉ。アレを使ったようじゃの」
「「そうね」」
恵ちゃん、臥留子ちゃん、集子ちゃんたちの会話が聞こえてきた。
彼女たちは大きな声で話している訳ではない。
だけど神力を混ぜての会話なので、テレパシーのように直接頭の中に会話が入ってくるのである。
たぶん念話ってヤツだ。
(アレってなんだ?)
俺は声を出さず頭の中で言葉を組み立て恵ちゃんたちに問いかけた。
「アレってのは神力のことですっ」
「……神力を使って……できないことを……可能にした……」
「ふぉふぉふぉ。でなければ序盤でゲームオーバーじゃったのう」
(……?)
回答はしてくれたが俺には今ひとつわからない。
(ショットガンの使い方よ。あれは撃つだけの武器で叩けるようにはなってないの)
(どういうことだ?)
(打撃武器として使えるように神力で細工したってこと)
(ああ、そういうことか)
俺と呂姫ちゃんは念話で話をした。
それで理解した。
つまりこのゲームでは、主人公の警察官の青年が持つショットガンも拳銃も、本来の使い道通り銃器としてしか使用できない設定だった。
そこに呂姫ちゃんが神力で干渉して、殴れる武器として進化させたということだった。
(なら他にも武器にできるんじゃないか?)
(そうね。後で試してみるわ)
一般のお客さんたちには一切聞こえない会話を俺たちはしながらゲームを続ける。
そしてゲームの重要なポイントに差し掛かった。
そこは道が狭くなっていて、そこに俺たちを通せんぼするように中ボスである大型ゾンビたちが群れをなして待ち受けているのである。
「ホントならショットガンが欲しいところですよね?」
「……でもショットガンは壊れて……捨ててしまった……」
「ふぉふぉふぉ。広範囲攻撃がしたいところじゃのう」
恵ちゃん、臥留子ちゃん、集子ちゃんがそう発言した。
それはまったくその通りで、今俺(彼女役)が持っているのはドロップ品の拳銃。
そして呂姫ちゃんもドロップ品で通算三本目の斧である。
ともに一対一で戦う分には問題ないが、大勢の敵に包囲されるとピンチになる武器である。
そんなときだった。
(あれを使うわよ)
(へ? あれって……?)
念話で呂姫ちゃんが俺にそう告げてくる。
だが俺は呂姫ちゃんの意図がわからない。
見回しても宝箱はないし、ドロップしたショットガンやマシンガンなんかも見当たらないからだ。
(あれを使うのよ)
そう発言した呂姫ちゃんは通りの隅につかつかと警察官の青年を進ませるのであった。
この先どうなるか、大吉さんにもわからないのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。




