158話 チェンジなのです。
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「助かったな。バージョンも同じだから、まったく同一のゲームだ」
店のゲーミングPCにインストールされていたのは、自宅でプレイしたゾンビゲームとまったくの同一バージョンだった。
これなら展開もアイテムのありかもなにもかも一緒なので、呂姫ちゃんにとって問題はない。
「これ、加茂くんの家のとまったく同じね。これなら大丈夫だわ」
呂姫ちゃんも自身で確認し、俺の家のとまったく差異がないのがわかって安心した様子だ。
「開店時間までまだあるから、ちょっとプレイしてみるか?」
「そうね」
俺と呂姫ちゃんはゾンビゲームを二人プレイで行ってみた。
俺は主人公役の警察官の青年で、呂姫ちゃんはその彼女の女性役だ。
俺は手持ちのショットガンと拳銃を使い分けてプレイし、呂姫ちゃんはデフォで持っている棍棒でゾンビを滅多打ちにしていた。
「問題ないな」
「そうね。これなら行けるわ」
ある程度ゲームが進んだところで俺たちは一旦ゲームを終了させた。
もうまもなく開店時間になるからだ。
やはりお客さんにはスタート画面から見せる必要があるのだ。
そして開店時間になり、店員さんがシャッターを開けてお店がオープンした。
もちろん純粋にPC機器を購入するために来店した人たちもそれなりにいたが、やはり大多数のお客さんの目当ては俺たちだった。
そのため俺たちがいる特設ブース周辺には、あっという間に人だかりができたのであった。
■
そして俺と呂姫ちゃんは二人プレイでゾンビゲームをスタートさせた。
オープニングの物々しい画像が流れてゲームは始まる。
そして今まで通りに俺が警察官の青年を選び、呂姫ちゃんにはその彼女を選ばせようとしたときだった。
「せっかくだから、プレイヤーを逆にしてみない?」
呂姫ちゃんが妙なことを言い出した。
「へ? どうして?」
「そっちの方が新鮮だからよ」
……って言ってもな。
俺がそう戸惑っていると、呂姫ちゃんが主人公の警察官を選んでしまった。
……マジかよ。
俺は仕方なく主人公の彼女役、つまり一般女性キャラを選ぶしかなくなってしまったのだ。
そしてゲームが始まった。
街の入り口に立っているのだが、すでにゴーストタウンとなっていてゾンビが通りを徘徊している。
「遠距離だから、まずショットガンで撃つといいわ」
俺は女言葉になるように注意しながら、呂姫ちゃんに指示を出す。
「わかったわ」
ゾンビたちはすでに俺たちに気づき、両手をぶらぶらと揺らしながら近づいてくる。
――ダーンッ!!
呂姫ちゃんがショットガンをぶっ放した。
すると周りのお客さんたちからどよめきが起きた。
「当たってねえぞ?」
「あの距離で外すか?」
「まさかのノーダメージ……」
そうなのである。
呂姫ちゃんは広範囲攻撃であるショットガンをぶっ放したにも関わらず、どのゾンビたちにもダメージが入っていない、つまり当たっていないのである。
「ちょ、ちょっと……。なんなのよこれ!」
呂姫ちゃんがうろたえ気味につぶやき、またショットガンを撃つ。
……しかしまたハズレ。
完全に明後日の方角に向かって撃っているのだ。
これならショットガンでも当たるはずがない。
「ええっ。どうしよう……?」
もうゾンビは眼前に迫っていた。
なのに主人公の警察官の青年は棒立ちしている。
……やばい。
開店と同時にゲームオーバーなんて目も当てられない。
「――援護するわ!」
俺は女言葉でそう叫ぶとデフォで持っている棍棒で目の前のゾンビを殴打するのであった。
大吉さん、大慌てなのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。