155話 適正なし、なのです。
【毎日昼の12時に更新します】
俺と四女神たちはPCショップへと向かった。
もちろんデモプレイのアルバイトのためだ。
「浴衣ですか? いいですね」
店に到着すると店長さんからそう言われた。
どうやら毎回のように俺たちの衣装が変わるのも好ポイントのようだ。
俺は白地に薄黄色のひまわりをあしらった浴衣姿。
もちろん長い金髪は後ろでお団子にまとめている。
胸元は正直に言うと少々苦しい。
そして臥留子ちゃんも白地の浴衣だが、薄青色のアサガオがデザインされている。
それが肌の白い臥留子ちゃんに似合っている。
そして長い髪はダイキチーナ同様に後ろでお団子にまとめていた。
店内の特設コーナーには、大型のゲーミングPCが二台セットされていた。
デスクトップ型のヤツで筐体の中身のLEDが光るのが見えるタイプだ。
強力なCPUとGPUを内蔵したもので、これはかなり高価なモデルである。
まだ開店前なので、ウォーミングアップする時間はある。
俺と臥留子ちゃんはPCのスイッチを入れ、軽くプレイして各機器の具合を確かめた。
「……このコントローラー……使いやすい……」
「新型だな。始めて見るタイプだ」
臥留子ちゃんがそう感想を述べたので、俺は返事をした。
大まかなデザインは従来のものと同じなのだが、ホールディング感が若干向上しているイメージがある。
「そうなんです。今日入荷したばかりの新型ですよ」
店長さんがそう補足してくれた。
そうなのである。
新型のレビューの兼ねて、これを使って欲しいとのことのようだ。
■
そして開店。
今日もデモプレイがあることは告知されていたので、それなりのお客さんたちが集まっていた。
「じゃあ、始めてください」
俺と臥留子ちゃんを囲むように人垣が出来ていた。
そんな中、店長さんがそう宣言したのだった。
そしてプレイする。
二機の戦闘機が画面左右にそれぞれ展開される。
赤い戦闘機が俺、青い戦闘機が臥留子ちゃんだ。
二機ともすでに長年相棒を組んできたかのような連携を見せて、左右に飛び回り、弾丸を避け、こちらのビームを命中させる。
「「「「「おおっ~!」」」」」
観客たちのどよめきが伝わってくる。
そして俺、臥留子ちゃんともに二回ほど撃墜されたが、ゲームオーバーになることもなく、無事にゲームクリアをこなした。
その後も時間が続く限りプレイをし続けたのだった。
■
「今日も六分四十秒辺りが出ましたね?」
店長さんがアルバイトが終わった後にそう告げてきた。
「え? どうしてわかったんですか?」
俺は疑問に思って尋ねる。
六分四十秒とは、例のアレだ。
俺が無意識に左手で左の胸を掻く仕草をする癖のことだ。
「いや~。ダイキチーナさんが実際に使った新型のゲームコントローラーに今日も高値が付いちゃったんですよ。お客様たちはよく見ていますね」
なるほどである。
お客さんたちの間では、ダイキチーナが六分四十秒辺りで左手で胸を掻くのが広く伝わっていて、その手で触れていた機器が毎回オークションになっているようだ。
「とにかく今日もありがとうございました。またお願いしますね」
「こちらこそ、ありがとうございます。また来ます」
そう挨拶して俺たちは店長さんと別れ、店を後にしたのだった。
■
「残るは私ね?」
「そうなんだがな……」
「……含みのある言い方ね?」
俺と呂姫ちゃんが問答をしていた。
ここはいつもの俺の神武寮の自室である。
そしてメンバーはいつもの四女神。
「大吉さんの気持ちもわかりますっ。だって呂姫ちゃん、ゲームぜんぶ苦手ですからっ」
「……呂姫は……センスが……ない……」
「ふぉふぉふぉ。あれだけいろんなゲームやったにも関わらずにもじゃからのう」
恵ちゃん、臥留子ちゃん、集子ちゃんがため息混じりでそう呟いたのであった。
そうなのだ。
今回の各回一人ずつダイキチーナとプレイする企画が出来て以来、各人にどんな適正があるのかアクション系やパズル系などいろんなジャンルのゲームで試したのだが、呂姫ちゃんだけは、どのゲームにも適正がなかったのだ。
呂姫ちゃんのセンスのなさには大吉さんもお手上げなのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。