145話 収入は五等分なのです。
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「時間はやっぱり六分四十秒辺り……。これ、癖なんですかっ?」
「……そう言うことはないと思うんだが、こうも続くと癖なのかもな……」
そうなのだ。
俺はまた六分四十秒に左手をコントローラーから離し、胸を掻いていたのだ。
おそらくは無意識。
で、下から持ち上げる感じで掻いたので、ドレスの胸元からポロリと零れそうになってしまっていた。
「ゲーム攻略とはまったく関係ないシーンか……」
「見てくれている人たちにほとんどが男性ってことですねっ」
ゲーム実況の動画なのに、いちばん盛り上がるのは無意識に胸を掻いて、胸がポロリしそうになってユルンユルンと揺れるシーンなのだ。
「複雑だ……」
「……でもいいんじゃないですかっ? 再生数が伸びれば入ってくるお金も増えますよっ」
「まあ、そうだな。……そう割り切るしかないか」
■
次の日の放課後も俺の部屋には恵ちゃん、呂姫ちゃん、臥留子ちゃん、集子ちゃんが集まった。
もちろん動画撮影のためだ。
「もうゲームの方はなんでもいいから。ネタも誰でも知ってるネタでいいから」
呂姫ちゃんにそう言われる。
動画の売りがダイキチーナなのがはっきりしたことで、ゲーム攻略は誰も知らないようなマニアックな技の紹介ではなく、もう誰でも知っているようなテクニックの紹介に成り下がっていた。
「そうなると服装が問題じゃないですかっ? 適度にエロさがあって、かつマンネリにならないものじゃないとダメですよねっ?」
恵ちゃんがそう発言する。
「そうなのよね~。ん~。じゃあ、今回はこれで行くわ」
そう呂姫ちゃんが言って、印を切って登場したのは大きな白いワイシャツだった。
上はボタンを胸元まで外し、下は生足のままと言ったエロい格好だった。
しかも胸元のボタンの外し方が絶妙で全体が見えそうで見えない。
胸のたわわさと肌の白さを強調しつつ、ポロリだけはギリギリ避けている。
そんな感じのエロさだった。
「じゃあ、ゲームは適当なものにするからな。撮影よろしく」
そう言って俺は平凡なゲームを解説付きでプレイし始めた。
撮影はいつもの通り、プレイ画面とプレイしている俺、つまりダイキチーナである。
それをポンコツPCで編集して今日もアップすることができたのだ。
「げげっ! 再生数が百万近くまで伸びてるぞ!」
夜のことである。
PCでログインして確認すると、再生数が九十万を超えていた。
しかもアップしてから一時間足らずの間である。
「もう、このまま職業にしちゃってもいい感じですねっ」
「いや、さすがに高校生辞めてまでする仕事じゃないだろう」
そうなのだ。
このペースで行けば、下手に働くよりも収入があるだろう。
だが、これは俺ひとりの功績ではない。
協力してくれている四女神に均等に分けなくてはならないし、そうすると俺個人の収入で考えるとそれほど多いと言う訳でもない。
「あ、呂姫ちゃんたちから連絡来てますよっ。明日も放課後にこの部屋で撮影するそうですっ」
スマホを見た恵ちゃんがそう教えてくれたのだった。
■
こうして俺、つまりダイキチーナと四女神によるゲーム攻略動画の撮影は毎日のように続けられた。
再生数は百万をあっという間に超えて、BeeeTubeのジャンル別で見れば、上から数えたほうが早い人気ゲーム攻略動画となった。
入ってきた収入は俺の強い意志もあり、五人で五等分することで一致。
全員喜んでいたが、いちばん喜んでいたのはやはりお金大好きな金尾集子ちゃんだった。
■
そんなある休日である。
俺と四女神たちは神武商店街を歩いていた。
日々の暮らしに必要な細々としたものを買いに来たのである。
そして例のPCショップの前を通ったときだった。
「ん? ちょっと待ってくださいっ。私、気になることがありますっ!」
そう発言した恵ちゃんがひとりでスタスタとPCショップの中へと入って行ってしまったのだ。
「どうしたんだ……?」
俺は理由がわからないので、きょとんとしてしまった。
大吉さんはフェアな考えの持ち主なのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。