140話 お金を稼ぐ方法なのです。
【毎日昼の12時に更新します】
「……それでどうやってお金を得るかなんだよなあ……」
教室。
俺は頭の後ろで手を組んで椅子の背もたれにのけぞった。
「働いたらどうですかっ?」
「働く?」
「はいっ。放課後とか土日とか祝日とかにアルバイトするんですっ!」
「そっか。そんな手があったな……」
確かにそうである。
放課後や学校が休みの日を利用すれば、働けない訳じゃない。
そのバイト料を貯金すれば買いたい物も買えるだろう。
「得意なものがあるのなら、ネット配信ってのもあるわよ」
話を聞いていたようで、呂姫ちゃんがそう提案してきた。
「得意なもの? ネット配信? ……俺、ゲームくらいしか得意なものないぞ」
「じゃあ、それを配信したら? ゲーム攻略とかの配信よ」
「マジか? それで稼げるのか?」
「配信すれば即儲かる訳ではないけれど、元手がかからないからやってみる価値はあるかもよ」
呂姫ちゃんはそう説明してくれた。
「それですね、大吉さんっ。どこかでアルバイトをするっ。そしてゲーム配信もするっ。これでゲーミングPCが買えるかもしれませんよっ」
こうして俺は恵ちゃん提案のアルバイトと呂姫ちゃん提案のゲーム配信でお金を稼ぐことになったのだ。
■
そして土曜日になった。
季節は五月末。新緑が眩しい気持ちの良い日だった。
そんなある土曜日なのだが、俺の狭い部屋に俺と恵ちゃんは当然として、更に呂姫ちゃん、臥留子ちゃん、集子ちゃんがいる。
前にも言ったがこの神武寮は女子禁制なのだが、神力を使ってなんの問題もなく堂々と呂姫ちゃんたちは入って来ている。
「……で、得意なゲームでゲーム配信をするってことなんだが、さしあたってなにをすればいいんだ?」
「大吉さんが得意なゲームをプレイしている画面を撮って、解説を入れればとりあえずオッケーだと思いますっ」
「神子恵の言う通りね。まずはゲーム機でもスマホでもいいから得意なゲームはあるかしら?」
「う~む。……じゃあ、まずとりあえずってことでスマホ版の格闘ゲームでもするか」
「あえてスマホ版にする理由はあるんですかっ?」
「スマホ版はゲームコントローラーがないんで画面上をタップするんだが、コントローラーと違ってボタンの打刻感がないからミスしやすいんだ。その分難易度が上がってる」
「なるほどですっ。じゃあそれを大吉さんが上手にプレイすれば見た人が参考になるって仕組みですねっ」
「まあ、そういうことだ」
そして俺はスマホを手にメジャーな格闘ゲームをプレイしてみせた。キャラも変え、各コンボ技も見事に実現させてみた。
もちろんその際に発動させるためのコツも音声で解説済みだ。
複雑な編集をするための高性能パソコンは持っていないので(その為もあってゲーミングPCが欲しいのだが……)、スマホでプレイしたゲームを別のスマホで撮影して音声もそのスマホで同時録音と言う手抜きに近い映像作品がやがて完成した。
そしてそれをBeeeTubeにアップする。
果たしてどれだけの人が見てくれるのだろうか……?
■
同時に俺は実際のアルバイトも探してみた。
ネット検索でも良かったのだが、職場は実際の目で見ておきたいので神武商店街に実際に出向いてお店一軒一軒を伺ったのだ。
ただ厳しかった。
高校生不可の店がほとんどで、たまにあるにしても時給が限りなく安い。
これじゃ貯金をするのにどれだけ月日がかかるのか想像したくもない。
そんなことをしていたら、例のPCショップの求人広告が目に止まった。
基本的には十八歳以上のフリーの人募集なのだが、一芸に秀でているのであれば高校生も可と書かれていたのだ。
「一芸ってなんだろうな?」
「神力が使えるとかじゃないですかっ?」
「んな馬鹿な。だとしたら神様の高校生しか働けんだろうが」
俺は同行している恵ちゃんとそんな会話をしている。
「私、ちょっと訊いてきますっ」
そう言い残すと恵ちゃんは店内にさっさと入ってしまった。
仕方ないので俺も店の中へと足を進める。
「一芸に秀でている高校生って、どういう意味ですかっ?」
恵ちゃんは店長と思える三十代くらいの痩せた男性にそう質問していた。
「例えばゲーム配信なんかで人気のある高校生とかですね。その人に店頭でゲーミングPCを使ってプレイしてもらえば集客もできるし、売上も伸びますから……」
そんな返事が帰ってきたのであった。
「……俺。ゲーム配信はしてるけど、日が浅いし、まだ人気ないしなあ」
「じゃあゲーム配信で人気者になったら、この店でもアルバイトできますねっ」
俺たちはそんな可能性の話をしながら寮へと帰るのであった。
■
「……ダメね。再生数がぜんぜん伸びないわ」
BeeeTubeに載せたゲーム配信の方である。
呂姫ちゃんは残念そうに首を振る。
「加茂くんのテクニックは悪くないの。解説もツボを押さえているし見た人には攻略方法もしっかり伝わると思うんだけど、……どうも……足りないのよ」
「足りないっ? 足りないってなんですかっ?」
「ビジュアル的なものよ。はっきり言えば、イケメンか美少女がプレイすれば見る人が爆発的に増えるわ」
俺は頭を抱えた。
確かにそうだろう。
例えば歌がうまい人がいる。だが同じくらい歌がうまい人がもうひとりいて、そちらの方が美男美女であれば、そちらが売れるのは道理だ。
呂姫ちゃんが言いたいのは、そういうことなのだろう。
「……方法……。ない訳じゃ……ない……」
そこで終始無言だった臥留子ちゃんが、いきなりポツリと発言したのであった。
大吉さんは得意のゲームでお金を稼ぎたいのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。