139話 ”好き”と言われたのです。
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体育祭は終わった。
俺はなんだか脱力感を味わうように、気の抜けた日々を送り始めた。
ちなみに体育祭の商品である神武商店街の商品券だが、そのほとんどが四女神が独占する形となっていた。
だが細かい取り分であれこれ揉めたようだ。
なので一位になった数よりも貢献度を評価する形となり、話し合いの結果、だいたい均等に分配されることになったのだ。
「ふっふーん。スマホ、スマホ!」
辻神呂姫ちゃんは最新型のスマホが手に入ったので、ご機嫌だった。
もちろん学校にも持ち込んでいて、事あるごとに見せびらかす次第だ。
金髪碧眼でナイスバディの呂姫ちゃんは制服姿がよく似合うのだが、その格好でスマホいじっている様子は、なんだかスマホのカタログ写真に採用されるんじゃないかと思うほど、絵になっている。
「……和服。……うれしい……」
山井臥留子ちゃんは念願の新しい着物を手に入れることができた。
薄青い色の下地に、紺色の菖蒲がデザインされた夏っぽい色柄の和服だ。
しかし臥留子ちゃんには着物姿が似合う。
小柄で姫カットの髪型。凹凸が少ないスラリとしたボディラインが故に和服をしっかり着こなせるのだろう。
涼し気な夏のデザインの新しい着物は臥留子ちゃんの清楚な感じがプラスされて、その魅力を高めている。
「ふぉふぉふぉ。ちと損したが、まあ良いじゃろう」
そう不満を漏らしながらもご満悦なのが、金尾集子ちゃんだった。
集子ちゃんは商品券でなにも買っていない。
それどころか商品券を手放している。
その理由は商店街に特に欲しい物がなかった集子ちゃんは金銭ショップに商品券を持ち込んで、それを現金に替えてもらったらしい。
ただ普通、商品券を売る場合、額面からかなり安い値段で買われてしまうようなのだが、そこは白髪赤眼超絶美少女の集子ちゃんで、ウルウル目で貧しい家計の足しにしたいと作り話で芝居をして、店員さんの情に訴えて高値で買ってもらったようだ。
まったくお金に関すると抜け目がないのが集子ちゃんだった。
「私はほとんと手つかずですっ」
そう宣言するのは神子恵ちゃんだった。
恵ちゃんは食べ物や食材以外欲しい物がないと断言していた通り、ちょこっと買い食いしたり、ちょこっとそれなりの高級食材を買って家で調理したりしかしていないので、数万円単位までたまった商品券を使い果たしていないのだった。
「大吉さんは商品券で欲しい物が買えるんですか?」
恵ちゃんが尋ねてきた。
時間は授業の合間の休み時間。近くの席から立ち上がって俺の座席へと来たのだ。
「……うーん。ぜんぜん足りないんだよな~」
「えーと。ゲーミングPCでしたっけ?」
「そうそう。満足できるスペックのものだと三十万円は必要だからな」
「私の残りの商品券あげましょうか?」
「マジか……!? ……い、いや。それはやっぱり遠慮する」
「どうしてですか? 私は別に構わないんですよっ」
「いや、……なんて言うか俺の意地だ。自力で獲得しないと自分の物だと思えない性分なんだ」
すると恵ちゃんはちょっとだけ目をまん丸にする。
「偉いですねっ。私、大吉さんのそういうところ好きですよっ」
……ドキリ。
俺は恵ちゃんの発言にドキリとした。
もちろん”好き”と言われたからだ。
だがこの好きは”好ましい”と言うレベルの”好き”であって、決して”愛している”の”好き”じゃないことは俺でもわかる。
それでもロリっ子ではあるが、美少女でもある恵ちゃんに”好き”と言われたになぜか胸騒ぎを感じてしまうのであった。
大吉さんはウブなのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」完結済み
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。