135話 両性具有なのです。
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風景が変わり始めている。
それまで川沿いのサイクリングコースを走っていた訳だが、今度はそこを降りて住宅街を走ることになる。
住宅街はマンションあり、アパートあり、一戸建てありの特徴的はものはない典型的な郊外のベッドタウンである。
その住宅街を抜けるとその先はゴールである神武高校となる。
なのでこのミニミニマラソン競技はそろそろ終了だ。
前方に見える集団は二つあった。
近い方の集団を見ると五人。そのはるか奥に見えるのがおそらくトップグループで、これまた五人前後に見えた。
俺たちは神力の後押しもあり、距離が近い集団にまず追いついた。
「……全員、オッサンだな」
そうなのだ。
見るとすべて一般参加の商店街のオッサンたちである。
後方から見ただけでオッサンだと判断できたのは、全員とも頭頂部が禿げ上がっているからだ。
なのでいい年のオッサンたちなのだろうが、ジョギング愛好家たちなのか走るフォームはすばらしい。
「はいっ。全員男性ですねっ。これじゃ私が裸にするのは、ためらっちゃいますっ」
「そりゃそうだ。間違っても俺は見たくないぞ」
恵ちゃんの問いかけに俺は返事をする。
オッサンの全裸なんて金をもらっても見たくない。
「相手が男なら、山井臥留子の出番となるわね? 行ける?」
「……ん……。やってみる……よ……」
呂姫ちゃんからの依頼で臥留子ちゃんが空中に印を切る。
するとボフンと一瞬白い煙が立ち上り、オッサンたち五人の集団が包まれた。
するとである。
テカテカと光っていた頭頂部が一瞬で長い黒髪となり、ジョギングウェアからもわかる形で胸が大きくなっていた。
ハゲオッサンズたちが、走るたびに胸がユルンユルンと揺れる妙齢の美女集団となっていたのだ。
だが、である。
「おい、どうして走るスピードが落ちないんだ?」
「おかしいですねっ。恥ずかしくないんでしょうかっ?」
そうなのである。
走るたびに胸がユルンユルンと波打っているのに元:オッサンたちは走りをやめない。
スピードを落とさずに、ただ黙々と走り続けているのだ。
「……ん。……ちょっと効き目が……悪いのかも……」
臥留子ちゃんが、首を傾げながらそう言う。
手応えが足りなかったとでも言いたげな表情である。
「ちょっと、試してみる。これでも喰らえ」
呂姫ちゃんが宙に印を切る。
すると元:オッサン、現:妙齢美女たちのジョギングウェアが黒い超ハイレグビキニ姿に変わったのである。
上は胸の谷間を強調した布地が少ないデザインで、下は切れ込みがエグすぎる大胆なものなのだ。
なので、走るたびに胸はユルンユルンと揺れて布から零れそうである。
「れれれ?」
呂姫ちゃんが戸惑いの声をあげる。
「おかしいですねっ。全然恥ずかしがっていませんよっ」
「ふぉふぉふぉ。なら近づいて確かめるのじゃ」
俺たちは速度をあげて元:オッサンたちと並走する形となった。
道が住宅街に入ったことで道幅が広がったことで並走が可能になったのだ。
「な、な、な、なんだありゃ~~~っ!!」
「こ、この世のものとは思えませんっ。ひどいですっ」
「ま、まさかこんなことになるなんてっ!」
「……神力……効きづらい……人たち……だった……」
「ふぉふぉふぉ。この世の怪奇じゃのう」
俺も四女神たちも全員驚いた。
それもそのはずで、上半身の立派な胸を見ると間違いなく女性なのだが、下半身にもっこりが存在したのだ。
つまり元:オッサンたちは女性に見えるが中身は男性のままだったのである。
なので羞恥なく、走り続けることができたのだ。
「男でもあり、女でもあるってことか?」
「りょ、両性具有ってヤツですねっ。正直困りましたっ」
俺たちは神力が中途半端にしか効かない難敵と出会ってしまったのである。
大吉さんたち、ピンチなのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」連載中
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。