132話 ストーカーなのです。
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「……あとどれくらい先行ランナーがいるんだろうな?」
「そうですねっ。ちゃんと数えていなかったので適当ですが、もう二十人もいないとおもいますよっ」
俺が何気なく尋ねた質問に恵ちゃんが答えてくれた。
コースはすでに川沿いのサイクリングコースとなっているので、折り返し地点を過ぎてからだいぶ経過している。
「残りの距離も少ないし、スパートかけた方がいいかもよ」
「……同意……早め早めに……対処する……」
「ふぉふぉふぉ。ターゲットはまとめてじゃなく、各個撃破が楽だしのう」
呂姫ちゃん、臥留子ちゃん、集子ちゃんがそう発言した。
そうこうしているうちに先行している集団が見えてきた。
見通しの良い土手の一本道なのでそれはすぐに発見できた。
「目標一般男性四人っ。神武高校女生徒一人ですねっ」
「妙な組み合わせだな。ふつうは見知った人と集団を組むんじゃないのか?」
そうなのである。
俺たちがそうであるように、大概この手の長距離走では親しい連中とつるんで走ることが多い。
だが先行集団を見ると一般参加のオッサン四人がいて、その中心に神武高校の女生徒がいるのだ。
そしてたぶんオッサン連中は顔なじみ。
だがそれと女子高生も親しい連中とは考えにくい。
なにか理由があるのだろうか?
見ていると、オッサンたちは代わる代わる女子高生に話しかけているのだが、なんとなくだがそれを女子高生が迷惑そうにしている雰囲気がある。
「ああっ! あの女子生徒は神武高校二年一組の早乙女有朱さんですよっ!」
「早乙女? 誰だそれ?」
まったく聞き覚えのない名前に俺は恵ちゃんに問い返す。
「知らないんですかっ!? 学年一の美少女と名高い人ですっ」
「すまん。知らんな」
すると恵ちゃんが熱心に説明してくれた。
「彼女は二年生の中では、まずまちがいなくいちばんの美少女ですっ。キレイなだけでなく性格も良くて完璧美少女と言っても差し支えありませんっ」
「なぜそこまで知ってるんだ?」
「以前に教えましたよね? 私は大吉さんにハーレムを作ってもらおうとして近隣中の美少女を神武高校の一年生として入学させたって話ですっ」
「……ああ。そう言えばそんな話があったな」
思い出した。
あれは入学した日のことだった。
俺が所属する一年二組の美少女の比率が高すぎるのはすべて、恵ちゃんが神力でやらかしたという話だったはずだ。
「でも、その早乙女さんは二年生なんだろ? それと俺とお前にどんな関係があるんだ?」
素朴な疑問を呈した。
「実はあるんですっ。私は神力で彼女も一年二組に編入させようとしたんですっ。でも……さすがに一年生を二回もさせるといろいろボロが出そうなので、泣く泣くやめることにしたんですっ……はぅ……痛いですっ」
俺は走りながら恵ちゃんの額に手刀を落とした。
「人の人生を狂わせることをするな」
「酷いですっ。だから、しなかったんですから、この仕打ちは酷いですっ」
「未遂でも同じだ。……で、その早乙女有朱さんはなぜオッサンたちといっしょに走ってるんだ? オッサンたちとは知り合いなのか?」
「違うわよ。あれはつきまとわれているのよ。……つまり、ストーカーね」
呂姫ちゃんがそう断言した。
「ストーカー? 元から狙われていたのか?」
「違うでしょ? 走っていたら好みの美少女がいたから、いっしょに走って話しかけているだけでしょ?」
呂姫ちゃんがそう言う。
すると臥留子ちゃんたちも発言した。
「……だとしても……女の子には……迷惑……」
「ふぉふぉふぉ。オッサンたちに言い寄られるのは、さぞ迷惑じゃろうな。ふぉふぉふぉ」
中の人がジジイの集子ちゃんにそうまで言われるオッサンたち。
まあ、オッサンたちが悪いな。
「どうですっ? 人助けも兼ねて抜きましょうかっ?」
「そうだな。神力でなんとかしてやってくれ」
俺はそういうのであった。
するとこういうときにはいちばん役に立つ臥留子ちゃんが立候補した。
「……私が……やる……女の子……助ける……」
大吉さんは弱い者の味方なのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」連載中
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。