128話 呂姫ちゃん、また間違えるなのです。
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「だいたい十人以下ってとこだな。……でも男が何人いて女が何人なのか、ごっちゃごちゃで走ってるからわからんな」
俺はそう発言した。
そしてその言葉通りで、集団は密集していて男女の内訳がよくわからん。
「さっきみたいに臥留子ちゃんがいっせいに女体化したら、また女性が男体化しちゃうのでややこしくなってしまいますっ」
恵ちゃんが悩み顔でそう答える。
「面倒だけど、また同じ様に一斉にやる?」
呂姫ちゃんがそう言う。
そのときだった。
「ふぉふぉふぉ。ワシは見分けがつくぞ?」
意外なことに集子ちゃんがそう回答した。
「見分けがつくのか? ならうまい具合に男女に分けられないか?」
俺は無理難題を言ってみる。
ここにいるのはいちおう神様なのだ。神力でなんとかなるのかもしれないしな。
「ふぉふぉふぉ。ならワシがやってみようかの」
そう集子ちゃんはジジイ言葉でそう言うと、ムムムと唸りながら空中に印を切る。
「うわっ! すげえっ!」
一万円札の乱舞だった。
総額いくらかわからないほど大量の一万円札が先頭集団を包み込んだのだ。
だがその乱舞にも一定の規則があるようで、大きなうねりを作りながら集団を左右に選別して行く。
「ああっ。男女が分かれましたよっ!」
恵ちゃんが叫んだ。
そしてその言葉通りに右側が男、左側が女の列に分かれたのだ。
「ふぉふぉふぉ。視界を一万円札で制限して進行方向を男女別に分けたのじゃ」
なんともはやである。
男女の区別がついていた集子ちゃんだけに、男子を右側方面へ、女子を左側方面へと走らせることが可能だったようだ。
「これなら、面倒なく神力を使えますねっ」
「なら、最初は女子の方から行くわよ。これでも喰らえっ!」
恵ちゃんの言葉に返事をした呂姫ちゃんが宙に印を切った。
「い、い、いや~~~っ!!」
「み、見ないで~~~っ!!」
「ふえ~ん。お嫁に行けないよ~っ!」
「や、やめてっ。……サイアク~ッ!!」
四名いた女子選手たちが全員超絶ビキニ姿になっていた。
彼女らは一般参加の選手、つまりふつうのお姉さんたちなので、元の服は自前のもので統一感がなかったのだが、今はすべて黒色ビキニになっていた。
「「「「無理~~~っ!! もう走れない~~~っ!!」」」」
ユルンユルン揺れてしまう胸を抱えて、四人ともに立ち止まってしまった。
俺たちはそれらを横目にゆうゆうと追い抜く。
これで残るは男子選手の列だけとなった。
列はすべて一般参加、つまり商店街の男性たちのようだ。
若者もいるし、頭のはげたオッサンたちもいる。
「じゃあ、またやるよ。これでも喰らえ」
呂姫ちゃんがそう言って空中に印を切った。
すると自前のジョギングウェア姿だった男子選手たちが一斉に超絶黒色ビキニ姿へと姿を変えた。
「ろ、呂姫ちゃん。ちょ、ちょっとなにやってるんですかっ!?」
「あ、順番間違えた……。女体化が先だった……」
そうなのである。
走っているのはジョギング愛好家の細マッチョの男たち。
それらの衣装が女性用の超絶ビキニになったのだ。
胸は平らだし、下はもっこりだし、気持ち悪いことこの上ない。
「「「「「ぬお~~~っ!」」」」」
男たちは絶叫した。
「驚いたぞ」
「しかしこれはこれで……」
「悪くない」
「これは萌える。いや、燃えるぞ」
「……女装、サイコ~!」
どうやら男たちに変な趣味を目覚めさせてしまったようである。
そして気合いが入ったのか、走るペースを上げてしまったのだ。
「ま、まずい。神力があんまり効かなくなっている!」
呂姫ちゃんが慌てたように言う。
「これは良くないですっ。さっさと神力使いましょうっ」
恵ちゃんは焦る。
だがその恵ちゃんの得意技は裸体化だ。男を剥いても気持ち悪いだけだ。
「……待って……。まだ……間に合う……」
そう言った臥留子ちゃんが着物の裾をはだけて足を高速で動かした。
百メートル走や男女混合リレーのときにみせた小走り高速走行だ。
そして遠ざかる黒ビキニ男性集団との距離を徐々に詰めていくのであった。
辻神呂姫ちゃんはうっかり屋さんなのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」連載中
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。




