表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
126/514

126話 欲しいモノと、好みの女の子とはなのです。

【毎日昼の12時に更新します】



 

 その集団との距離は、まだだいぶあった。

 だが、こちらは体重軽量化で余力十分。一方向こうは走る速度が半分になっているのだから、慌てずにいてもやがて追いつくだろう。




 そんな心の余裕があったからか、俺たちは商店街の風景を楽しみながらの走りとなった。




「あっ! 携帯電話のショップがある。スマホ、欲しいのよ!」




 辻神呂姫ちゃんが足を緩めてショップのショーウィンドウに手をつく。

 そこには最新型のスマホが何種類も飾ってあった。




「呂姫ちゃん、ダメですよっ。いちおう競技の最中なんですよっ」




 恵ちゃんがそうたしなめると、わかったわよ、と言いながら後ろ髪が引かれる思いで呂姫ちゃんはスマホショップを離れるのだった。




 そしてしばらく走った後である。




「……あ……呉服屋さん……欲しい」




 商店街の中にある伝統がありそうな着物屋さんがあった。

 それを見つけた山井臥留子ちゃんはショーウィンドウに張り付いた。




 そこには色鮮やかな振り袖が飾られていた。

 花模様を基調とした赤い着物で確かに色白の臥留子ちゃんに似合いそうだ。




「臥留子。寄り道は禁止よ。行くのは体育祭が終わってからよ」




「……ん……。わ……わかった……でも、ざんねん……」




 呂姫ちゃんの指摘で臥留子ちゃんは我に返る。

 そして俺たちは再び走り始めたのであった。




「ふぉふぉふぉ。これは気になる店だのう」




 しばらく走るとふいに集子ちゃんが走るのを止めた。

 見るとそこには金券ショップがあった。




「買いたいものでもあるのか?」




 俺がそう集子ちゃんに尋ねると、集子ちゃんは首を横に振る。




「買いたいものではなく、売りたいものじゃな」




「なにをだ?」




「ふぉふぉふぉ。今回の体育祭で集めた商品券じゃ。

 特に買いたいものがないときや、この商店街で売ってないものが欲しいときは、ここで現金化するのも手じゃな。

 ……もっとも額面より安くなってしまうんじゃが……。ふぉふぉふぉ。」




 さすが高利貸しの神、金尾集子ちゃんだ。

 お金に関する意識はとても高いようだ。




「集子ちゃん。それだとしても体育祭の後ですよっ。今は走るのですっ」




「ふぉふぉふぉ。そうじゃのう」




 恵ちゃんに促されて集子ちゃんは走り出すのであった。




「ちなみにお前は欲しいものはないのか?」




 俺は恵ちゃんに尋ねる。




「ありますよっ。いっぱいありすぎて困っちゃうくらいですっ」




「欲張りだな。商品券を使ってもそんなにたくさんは買えないと思うぞ?」




「大丈夫ですっ。私が欲しいのは食べ物ばかりなので何万円もするようなものじゃありませんからっ」




 なるほど、と思った。

 そう言えばあずきバーガーを食べたときに、ハンバーガー自体を初めて食べたと言っていた。




 だからまだ他にも食べてみたい食品がいっぱいあるのだろう。

 俺はそう思うのであった。




 ■




 先行する集団との距離がだいぶ近くなったときである。




「……そう言えばっ?」




 と、俺の近くを走る恵ちゃんが頬に指を当てながら俺を見るのであった。




「ん、なんだ?」




「今回の体育祭で、大吉さんはたくさんの女の子たちの裸や恥ずかしい姿を見たと思うんですが、どの女の子がいちばん好みでしたっ?」




 う、……ぐぐぐ。




 俺は返答に困った。

 そりゃ確かにたくさんの女性の恥ずかしい姿を見てきたけれど、そのほとんどが名前も知らない女の人だったので、いちいち詳しく記憶には残っていない。




 それにだ。

 たとえ特定の人物がいいなと思っても、それを口にするのは恥ずかしいのだ。

 だから俺はとぼけようとした。




「……み、みんなキレイだったし、いちいち記憶には残っていないな……」




 すると俺の横を走る呂姫ちゃんが、ニヤアとあやしげな笑みを浮かべた。




「玉転がしのときの、加茂ダイキチーナちゃんじゃないの? だってあんなに自分自身で胸を弄っていたじゃない?」




「う、……ぐぐぐ」




 それは間違いない。

 俺はユルンユルンと揺れる自分の胸が気になって、思いっきり胸を揉んでいたのは事実だった。




 だがそのとき俺は金髪のダイキチーナの顔を鏡で見ていない。

 だからダイキチーナが好みかどうかはわからんのだ。




「……二人三脚……。成長した恵ちゃんに……大吉は……見惚れてた……」




 臥留子ちゃんが爆弾発言をする。




「う、……ぐぐぐ」




 そうなのだ。

 二人三脚のときに見た成長した恵ちゃんは、顔もスタイルも完璧に俺好みだった。

 こんなに自分好みの女性が実在するなんて、神様の奇跡なんじゃないかと、(……神様だけど)思ったくらいだ。




 だけどそれを顔に出すには行かないし、口で肯定する訳にはいかない。




「……ま、まあ、確かに二人三脚のときのお前は、なかなかの美少女だったな」




 俺はできるだけぶっきらぼうにそう口にした。

 すると俺の近くを走る恵ちゃんの顔がサッと赤くなり下をうつむいてしまったのだ。




「……そ、……それは……良くないのですっ……」




 恵ちゃんが弱々しい口調でそう答えたが、その真意は不明だ。




 ……な、なんなんだ? いったい?




 俺たちはそのまま走りを再開すると先行集団の背後につくのであった。




大吉さんの好みはとても身近なのです。(`・ω・´)∩


 


よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。



私の別作品


「生忌物倶楽部」連載中


「夢見るように夢見たい」連載中



「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み


「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み


「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み


「墓場でdabada」完結済み 


「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み


「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み


「空から来たりて杖を振る」完結済み


「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み


「こころのこりエンドレス」完結済み


「沈黙のシスターとその戒律」完結済み



 も、よろしくお願いいたします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ