123話 参加者全員が遅いのには理由があるのです。
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前方を見ると二十人くらいの集団があった。
よく見ると全員男だ。
露払いよろしく呂姫ちゃんがビキニ化で女子を排除してくれたので、残っている連中はみな男になったのだろう。
「……仕掛ける……よ……」
山井臥留子ちゃんが、そう言って空中に腕を伸ばし複雑に動かす。
どうやら印を切っているようだ。
「私も手伝うわよ」
呂姫ちゃんがそう言って、やはり宙に印を切る。
どうやら臥留子ちゃんと呂姫ちゃんの合作になるようだった。
だとするとしたら、どうなるのかは想像できる。
そしてその瞬間だった。
「キャ~~~ッ!!」
「嘘よっ! 嘘でしょっ!」
「ハズいよっ! やだっ!」
「やめてよ~っ! お嫁行けなくなっちゃうっ!」
「ど、どうして女のカラダにっ? やだあっ!」
一斉に悲鳴が響いて、元彼らの走るペースが一気に遅くなった。
それもそのはずで走っていた神武高校男子生徒と一般参加男性たちが一斉に美少女、美女へと変化してしまったからだ。
当然ビキニ姿であった。
それも胸の谷間を強調するために小さめの布地の上とエグいほど切れ込みは入った下の超エロい超絶ビキニ姿である。
胸とお尻が走るたびにユルンユルン揺れて走りにくいのもある。
だがそれ以上に恥ずかしいのだ。
この姿で走らされるなんて、なんの罰ゲーム? って具合である。
そのことで元彼ら、いや、今は妙齢の彼女らはてくてく歩くほどのペースまで落ちてしまっている。
いや、中にはあまりの羞恥で胸を両手で抱えて蹲ってしまっているのも多い。
「大成功ですっ!」
「ふぉふぉふぉ。さすがじゃな。感服したぞ」
恵ちゃんと集子ちゃんが臥留子ちゃんと呂姫ちゃんを褒め称える。
「……別に……それほどでも……」
「まあ、得意技って言えば得意技だしね」
臥留子ちゃんと呂姫ちゃんは称賛は素直の受け入れていたが、容易いことのようだった。
それで俺たちは更に二十人程を抜き、順位をあげた。
■
それからである。
しばらくすると商店街が見えてきた。
あの商店街は今回の体育祭のスポンサーになってくれているありがたい神武商店街だ。
その商店街を通り抜けると折り返し地点となるので、良い目標物でもある。
そのときだった。
俺たちの前を十人程度の集団が走っているのが見えた。
あのペースなら追いつきそうである。
そこで俺はふと疑問を感じた。
自慢じゃないが俺は走るのが遅い。
だから走っている最中で後方から追いつかれるなんてのは、しょっちゅうなのである。
だが今回のミニミニマラソンでは一度も追いつかれていない。
そしてである。
さっきから特に速いペースで走っている訳でもないのに、この俺でも追いつける集団がいるのである。
これはおかしい?
「なあ、俺には疑問があるんだ?」
「なんでしょうかっ?」
恵ちゃんが返事をしてくれる。
「俺の遅いペースで、どうして後ろから追い抜かれないんだ? そしてどうして先行している集団に追いつけることが可能なんだ?」
「良いことに気づきましたねっ? これには理由がありますっ」
そう言って恵ちゃんが薄い胸を張って自慢げな態度になる。
「神力よ」
呂姫ちゃんが横から応えてくれる。
「神力? どういうことだ?」
「……ワタクシたち……全員で……神力を……使っている……」
「ふぉふぉふぉ。そういうことじゃ。速く走れないようにしておるんじゃ」
臥留子ちゃんと集子ちゃんも説明してくれる。
だが、俺にはいまいち要点がわからない。
「私たち全員でマラソン参加者全員の走るペースを落としているのですっ」
「そう。だいたいいつもの五割程度の速さしか出ないようにしてるのよ」
「……なってこったい……」
つまりだ。
今、このミニミニマラソン競技の参加者は俺たち、つまり俺、四女神、澤井さん、河合さん、新井以外は走っても走ってもいつもの五割程度、つまり半分の速度しか出ていない訳だ。
だとしたら、俺が追いつかれることもないまま先行しているグループに、追いつけるのは当然である。
……おそるべき神力。いや、四女神。
俺は感嘆と驚愕を同時に味わったのであった。
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」連載中
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。