122話 邪魔者はビキニ化で追い抜くのです。
所用により6月28日(水)までお休みさせていただきます。
申し訳ございませんが、どうぞよろしくお願いいたします。
スタート地点は集団の塊だった。
合図の号砲が鳴っても、周りの人の数が多すぎてロケットスタートなんかできる状態じゃない。
集団中程に位置していた俺たち(俺、四女神、澤井さん、河合さん、新井)は、前の集団が動き始めるまで、しばし待たなくちゃならない状態だった。
そして前が動いたので俺たちも走り始めた。
最初はいきなり校外に出る訳じゃなくて、トラックを一周する。
だがやはり人の数が多すぎることで、走り始めたと言ってもジョギング程度の速度だ。
これなら体育が苦手な俺でも余裕で着いていくことができる。
それでもトラックの最初のコーナーを曲がり始めたときから、徐々に速度差が出始めて、トラック半分を過ぎた頃には先頭集団ができていた。
その数およそ二十人ほど。
「さすがに速い人は速いな」
「陸上部の人、三年生の人、あとはマラソン愛好者の方みたいですねっ」
「なるほどな。もう先行逃げ切りの勝負の出た訳だ」
「距離が短いからですねっ。慣れている人ならバテることなく走れますよっ」
俺の言葉に恵ちゃんが応えてくれる。
確かに五キロ少々など、普段走っている人ならば鼻歌交じり程度の距離だろう。
そんなこんなを話しているうちに、俺たちもトラック一周が終わり校門から外へと出たのだった。
そして商店街に向かって走っている。
前を見ると百人くらい。後方を振り返ってみてもやはり百人くらいいるので、俺たちはだいたい順位は中間くらいに位置しているのだろう。
「神子恵。そろそろ仕掛け始めてもいいんじゃない?」
「……仕掛けは……早め早め……が……大事」
「ふぉふぉふぉ。手遅れになる前に仕掛けるのが良かろう」
「そうですねっ。じゃあ、まずは呂姫ちゃんからお願いしますっ」
呂姫ちゃん、臥留子ちゃん、集子ちゃんの三女神が恵ちゃんに問いかけて、それに恵ちゃんが返答した。
なにか仕掛けるのだろうか?
「じゃあ、私から行くよ」
呂姫ちゃんがそう応えた直後だった。
突然に悲鳴が聞こえ、走っている一部の選手たちのペースが明らかに落ちたのだ。
「キャ~ッ!」
「やめてよっ!」
「恥ずかしいっ!」
「これじゃ無理~っ!」
参加している選手たちは男女混合なのだが、俺たちの前を走っていた神武高校の女子生徒や一般参加の女性たちの叫び声が響いた。
見ると一年生女子は赤、二年生女子は青、三年生女子は黄色、一般参加の女性は黒といったビキニ姿になってしまっていたのだ。
しかも上は胸の谷間を強調した布地が小さめ、下はエグいほどの切れ込みの超絶エロいビキニ姿になっていたのだった。
肌は大きく露出。そして胸とお尻は走るたびにユルンユルンと揺れる。
走りにくさもあるだろうが、それ以上に羞恥がすさまじいことから走る速度を急激に落としていた。
う、……ぐぐ。
俺は目のやり場に困る。
本音を言えばじっくり鑑賞したいのだが、そんなことをしたら失礼だろうし、第一俺も走る速度が遅くなってしまう。
なので必死に目を薄目にして見ないように苦心しながらペースを落とさずに走り続ける。
「やりましたっ。さすがは呂姫ちゃん。これで十人は抜けましたっ」
……卑怯な!
一瞬俺はそう思ってしまったのだが、恵ちゃんたち四女神が神力を使うのなんて今更だし、第一お金に困っている(集子ちゃんを除く)、三女神たちが商品券に固執している事情を知っているので、仕方ないなあ、と思い直す。
そしてそれからも先行するの集団に出くわすと呂姫ちゃんが水着姿に変えて、ペースを落とさせてそれを抜くというのを繰り返した。
それで二十人以上抜くことができたので順位はそれなりに上がったと思う。
だがである。
呂姫ちゃんが超絶恥ずかしいビキニ姿に変えて追い抜いたのは神武高校、一般参加を含めてすべて女子選手なのだ。
つまり男子選手がこの先でたくさん走っていることになる。
「……そろそろ臥留子ちゃんの出番ですねっ?」
「そうね。男子相手なら山井臥留子が頼りだわ」
「ふぉふぉふぉ。そろそろお願いするかのう」
恵ちゃんと呂姫ちゃんと集子ちゃんが臥留子ちゃんに話しかける。
「……ん……。わかった……仕掛けるから」
臥留子ちゃんはそう答えるのであった。
今のところ順位はまずまずなのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」連載中
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。