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115話 物々交換なのです。

【毎日昼の12時に更新します】



 

 俺たちは優勝した。

 すべての観客席から大歓声が起こる。

 それを聞いていると悪い気分ではない。




 だが、心の中から、それは違うだろう、と声もする。

 俺たちは勝ったが、そのすべては恵ちゃんたち女神の神力のお陰なのだ。

 実力で勝利したことは一度もない。




 でもまあ、それはそれ。

 今更悔いても仕方がないので、俺は深く考えないようにするのだった。




 ■




 そして続いて女子の騎馬戦が始まる。

 女子も各学年二チーム、そして一般参加二チームの合計八チームで行われる。

 つまり男子と同じだ。




「行ってきますっ」

「勝ちに行くわよ」

「……勝利……」

「ふぉふぉふぉ。出陣じゃ」




 四女神たちはそう言って騎馬を組んで会場へと向かった。

 ちなみに言葉の順番は、恵ちゃん、呂姫ちゃん、臥留子ちゃん、集子ちゃんだ。




 騎馬の構成は、いちばん小柄な恵ちゃんが大将で、馬頭が呂姫ちゃん、右横が集子ちゃん、左横が臥留子ちゃんだった。




 ただ臥留子ちゃんは恵ちゃんに次いで身体が小さいので騎馬を組むには少々アンバランスになる。

 そのことからこっそり自分の身体を集子ちゃんと同じ大きさにしていた。

 これも勝つための手段だろう。




 そして競技場所に八チームの騎馬が出揃った。




「位置について。よーい――」




 ――ダーンッ!――




 一斉に八チームの騎馬たちが動いた。

 だがその動き方には規則性があった。




 俺たち男子がそうであったように、学年対抗で首位の一年生が狙われているのだ。

 四女神以外のもう一チームの一年生騎馬が襲われた。




 それも一対一じゃなくて、二年生騎馬、三年生騎馬、一般参加騎馬のすべてのチーム、つまり六チームによる一対六によるタコ殴りだった。




 お陰で襲われた一年生騎馬チームは瞬時に轟沈してしまった。




「……思いっきり狙われているな」




「そうね。でも仕方ないわよ」




「まあ、そうなるよね。なんせ首位だからね」




 一年生観客席で俺がそう呟くと澤井さん、河合さんがそう答えてくれた。

 新井も無言でうんうんと頷いている。




 ■




「――はわわ。やられちゃいましたよっ!」

「――次の狙いは私たちでしょ?」

「――……当然……総掛かりで来る……はず……」

「――ふぉふぉふぉ。まあそうなるじゃろうな」




 四女神たちの騎馬でそんな会話される。

 見ると恵ちゃんたちの騎馬はグランド中央に追いやられ、徐々にだが全チームによる包囲網ができつつあった。




「来るよ。右端の二年生チームっ!」




 周囲を観察していた馬首役の呂姫ちゃんがするどく指摘する。

 見ると確かに右端にいる青い学年カラーのハチマキをした二年生騎馬チームがこちらに向かってくるのがわかる。




「じゃあ、神力使いますっ!」




「――待って!」




 そう宣言した恵ちゃんに呂姫ちゃんが待ったをかける。




「どうしたんですかっ?」




「今度は私がするわよ」




 そう言うと呂姫ちゃんはニヤリと笑うのであった。




 そして四女神騎馬を目標にした二年生騎馬は馬足を速めて突撃してくる。

 その距離は残り十メートルを切った。




 その瞬間だった。




「――ちょ、ちょっと、どうしてなの?」

「――なんでこんな格好になるのよ?」

「――ちょっと恥ずかしいよっ!」

「――訳わかんないよっ」




 二年生女子騎馬チーム全員が水着姿になっていた。

 それも胸の谷間を強調するデザインでできた超ハイレグビキニだ。

 しかも全員学年カラーである青色に統一されている。




 大将役の少女も馬役の少女たちも、進軍をし続ける度に胸がユルンユルンと上下に揺れる。これは観客席にいる俺にもよく見えた。




 ……なんたる眼福。なんたる至高。




 確かに見るのなら俺も男だし、全裸の方が魅力的なんだが、あれはあれで恥ずかしくて直視できないのがある。

 だが水着なら大丈夫だ。

 その辺りの境目は俺自身にもよく判断できないのだが、やはり布の有無がそう思わせるのだろう。




 そして超ハイレグビキニ騎馬と四女神騎馬が激突したのであった。

 騎馬同士がぶつかり合い、胸がユルンユルンと揺れる。

 騎馬の頭上では大将役の青ビキニ少女と恵ちゃんがハチマキを奪い合いをしている。




 そんなときだった。




「……あっ!」




 乱戦の中、手元を間違えたのか、恵ちゃんの右手が二年生女子大将役の少女の胸に引っかかったのだ。

 そしてそのままビキニがするりと抜けてしまい、恵ちゃんの手に残る。




「イヤ~~~~ッ!! やめてっ、恥ずかしいよっ、返してよ~~~~っ!」




 大将役の少女は右手で豊かな胸を隠し、左手を前に差し伸ばす。

 だがその左手は恵ちゃんのハチマキを狙っているのではなくて、指さしているのは恵ちゃんの右手が握りしめている青ビキニだった。




「……ハチマキと交換なら返しますよっ」




「……いいわ……。……ハチマキと交換する」




 二年生騎馬の大将役少女は青いハチマキを、四女神騎馬の大将役の恵ちゃんは青ビキニをそれぞれ差し出し合うのであった。




「まず、一勝っ!」




 そんな恵ちゃんの雄叫びが観客席にまで聞こえてきたのであった。


 


よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。



私の別作品


「生忌物倶楽部」連載中


「夢見るように夢見たい」連載中



「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み


「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み


「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み


「墓場でdabada」完結済み 


「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み


「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み


「空から来たりて杖を振る」完結済み


「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み


「こころのこりエンドレス」完結済み


「沈黙のシスターとその戒律」完結済み



 も、よろしくお願いいたします。

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