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109話 とんだドジっ子なのです。

【毎日昼の12時に更新します】

 

 ……これなら行けるっ!




 俺は自分を叱咤して動きの鈍くなった両足を懸命に繰り出した。

 見ると三年生男子も二年生男子も足が遅くなっている。




 それもそうだろう。

 辺り一面の女子がすべて全裸になってしまったのだ。

 目のやり場に困るだろう。




 脇目をふらずにゴールだけを見ればいいのかと言うと、そこにも最終ランナーとして待っている女子選手たちがやはり全裸になって胸と下を隠して身悶えしているのが見えてしまう。




 じゃあ目を瞑ればいいかと言うと、それじゃ走れない。

 本末転倒になってしまう。




 そんなこんなのジレンマで半目に閉じながらなるべく全裸女子たちを見ないように走っているのでペースが著しく遅くなっているのだ。




 俺は全裸の原因が恵ちゃんの神力だとわかっているし、仮に全裸女性たちを凝視してもどうせ神力解除の際には、その記憶が改竄されるとわかっているから、気分としてはたわわに実った果実が周りにたくさんあるんだ程度の覚悟で走っていられる。




 だから、追いつける。




 俺が最終コーナーを曲がったときには、ほんの三メートルくらい先に三年生男子ランナー、二年生男子ランナーがいる状態まで追いついていた。




 そして三年生、二年生の順番で最終ランナーである女子選手にバトンが渡された。

 やや遅れて俺も恵ちゃんにバトンを手渡す。




「恵ちゃん、任せた!」




「はいっ。任されましたっ」




 そう言ってバトンを受け取った恵ちゃんはすかさずに猛ダッシュを決めた。




 速いっ!




 すぐ前を走っていた二年生女子をあっという間に抜き去り、先行する三年生女子選手にもすぐさま肉薄する。




 二年生女子にしても三年生女子にしても学年対抗リレーの最終ランナーという事でいちばん足の速い選手を採用しているはずなのである。




 にも関わらず恵ちゃんは二年生女子ランナーをあっさり抜き、そして追いついた三年生女子ランナーに並び、やがて抜き去ってしまったのだ。




 さすがは足が速いと豪語するだけの実力である。

 下手な男子陸上部短距離選手よりも速いんじゃなかと思われるほどのスピードだ。




 恵ちゃんは身体は小柄なので足のストロークは長くない。

 だがそれを補って足の回転がとにかく速いのである。

 まるで走るために生まれてきたかのような申し子みたいだ。




 そして恵ちゃんはすでに第三コーナーを曲がり最終コーナーへ向かう直線に差し掛かっていた。




「……楽勝かな? ……いや、でも、待てよ。……そう言えば、あのときも……」




 楽観した俺だったが、嫌な予感がした。

 そうなのだ。

 恵ちゃんは百メートル走のとき、何も落ちていないただの直線で転けたことを思い出したのだ。




 ……なんせ天然のドジっ子だからな……。




 俺の予感はまずいフラグを立ててしまったようだった。

 恵ちゃんが最終コーナーに差し掛かったとき、足をもつれさせてしまったのだ。




 ――ステーン。




 恵ちゃんは百メートル走のとき同様に派手に顔面着地してしまったのだ。

 すると当然のようにもっていたバトンもあさっての方角へと吹き飛んでしまった。




「ま、まずいっ」




 こうなると勢いづくのは三年生女子ランナー、二年生女子ランナーだ。

 まだ倒れたままの恵ちゃんの脇をすり抜けて順位をそれぞれ上げたのだ。




 そのときだった。

 恵ちゃんが立ち上がった直後に頭上に両手を上げてゆらゆらと揺らしたのだ。




 ……神力かっ!?




「なによこれっ」

「い、痛いよっ」




 見ると一位になった三年生女子ランナーと二年生女子ランナーが裸足になっていた。

 グランドは整備されているので小石程度しかないのだが、それでも裸足で走るには痛いだろう。




 ……恵ちゃんのヤツ、なにやってんだ?




 俺は疑問を感じた。

 確かに裸足になったことで、足の裏が痛いことから三年生女子ランナー、二年生女子ランナーの二人の速度は落ちているが、今から恵ちゃんが走っても追いつける距離じゃない。

 第一、まだ飛んでいったバトンを拾ってもいないのだ。





 そしてよくよく見ると恵ちゃんに変化があった。

 絶望するように天を仰ぎ、そして両手で頭を抱えたのだ。




 ……ははあ。さては間違えたな。




 どうやら恵ちゃんは使う神力を間違えたらしい。

 本当は体操着を消して裸にするつもりが、間違えてシューズの方を消してしまったようなのだ。




 まったくとんだドジっ子である。

 そしてその証拠に再び頭上に掲げた両手をゆらゆらと揺らし始めたからだ。




「きゃーっ。なんでなのよっ。恥ずかしいっ~!!」

「見ないでっ! お願いだから私を見ないでっ~!!」




 三年生女子ランナーと二年生女子ランナーが走りを止めた。

 見るとやはりというべきか、二人は生まれたままの状態。つまり素っ裸になっていた。




「やめてよっ~!」

「お願いよっ~!」




 真っ白な柔肌を白日の下に晒し、たわわを右手で、恥ずかしい下を左手で隠し、身を捩って羞恥に耐えている。




「お先ですっ」




 バトンを拾った恵ちゃんが身悶えしている三年生、二年生全裸女子たちを横目にさっさと追い抜いた。




 そしてそのまま見事(?)に一着でゴールインするのであった。




恵ちゃんはドジぶりは天然なのです。(`・ω・´)∩ 



よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。



私の別作品


「生忌物倶楽部」連載中


「夢見るように夢見たい」連載中



「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み


「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み


「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み


「墓場でdabada」完結済み 


「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み


「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み


「空から来たりて杖を振る」完結済み


「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み


「こころのこりエンドレス」完結済み


「沈黙のシスターとその戒律」完結済み



 も、よろしくお願いいたします。

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