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106話 新たな神力の使い方なのです。

【毎日昼の12時に更新します】



 

 一年一組の見知らぬ男子も懸命に駆ける。

 だが三年生男子のヤツはかなり足が速い様でむしろ差は広がっている。




 そしてやっとバトンタッチを終えた二年生のランナーだが、こいつもかなり速い様で一年一組の走者のヤツとの差が縮まっているように見える。




「……やばいな」




 せっかく臥留子ちゃんが稼いだポジションなのに、この回の男子で逆転されそうだ。

 かと言って一生懸命走っている一組男子を責める気にはならない。

 俺が代わりに走ったら、もっと遅いだろうからだ。




「がんばって欲しいですっ。せめて集子(あつめるこ)ちゃんに渡すまではっ」




「そうね。まあでも圧倒的ビリにならなければ金尾集子が、お金の力でなんとかするでしょ?」




 子宝の神:神子恵ちゃんと邪神:辻神呂姫ちゃんがそう話す。

 ちなみに次の走者の集子ちゃんは高利貸しの神であるのでお金にがめつい。




 そうしている間に三年生男子ランナーは更に距離を広げ、一年生ランナーは二年生ランナーに追いつかれて団子状態になっていた。




「ふぉふぉふぉ。この位置関係ならば、なんとかなりそうじゃ」




 声だけはかわいいくせにジジイ言葉の集子ちゃんがそう自信満々に言う。




 そして三年生ランナーが女子にバトンタッチして、遅れて二年生、そして一年生がバトンタッチとなった。




 スタート時、集子ちゃんは位置的には最下位だが二位の二年生ランナーはほぼ直前。

 だが三年生ランナーはすでに第一コーナーを曲がり終えていた。

 ポニテに縛った長い髪の尾っぽを揺らしながら、三年生女子は颯爽と走って行く。




 そして集子ちゃんだが……、意外にも速かった。

 先行する二位の二年生女子ランナーにすぐに追いついたからだ。




 腰までの長い髪を後ろへなびかせて疾駆する白髪赤眼の少女は見ていて美しい。

 伸びる白磁器のような色の細い手足は身軽なシカの跳躍を思わせる。




「ああっ。二位を追い抜きましたよっ」




「やればできる子だな。……だけど中身はジジイなんだよな……」




「加茂くん。それは言わない約束よ」




 集子ちゃんの様子に、恵ちゃん、呂姫ちゃんたちとの会話も軽くなる。




 集子ちゃんは速い。

 追い抜いた二年生女子ランナーをあっという間に後方へ置き去りにすると先行する三年生女子ランナーを猛然と追う。

 単純な速度ならば三年生女子よりも集子ちゃんの方が上だろう。




 だがスタート時の差があり過ぎる。

 集子ちゃんが第三コーナーを曲がり終えたときには、三年女子はすでに最終コーナーへ差し掛かっていたのだ。




 そんなときだった。

 集子ちゃんが走りながら両手を上に掲げ、なにかをばらまくような仕草をみせたのだ。

 途端に紙切れが辺りに飛ぶ気配。




 ……あれは例の一万円札なのか?




「な、なんだっ!」




 驚愕した。




 競技場のコースの外側には一年生、二年生、三年生の観客席だけじゃなく、商店街の方々を始めとした一般用の観客席がある。




 そしてこういう行事だから、例えば我が子、例えば知り合いの子を撮影するために高価な一眼カメラを構えた人たちの大勢がシャッターチャンスを狙っているのだが、その群衆が突如コースを横切り、コースの内側スペースに陣取ったのだ。




 つまりカメラおっさん、カメラ小僧たち大集合である。

 むろん狙うのは最初から美少女だ。




 そしてリレー選手たちに向けられる大型の望遠レンズの群れ。

 何十人ものカメラマンたちが先頭を走る三年女子ランナーをレンズで一斉に狙い始めたのだ。




 その三年女子ランナーだがポニテの美少女であるだけでなく、非常にたわわで走る度に豊かな胸が上下にユルンユルンと揺れている。




 それが絵になるからだろう。

 とにかくたわわを備えたポニテ美少女に、飢える狼が獲物を狙う眼光にも似たレンズたちが、一斉に向けられたのだ。




「……な、な、なにっ? ……え、ちょ、ちょっと……恥ずかしいよ~っ!」




 三年女子のポニテ美少女は戸惑った。

 全力疾走中の戸惑いは走りの影響を招く。

 本人が無自覚でスピードを落としてしまうのだ。




「ふぉふぉふぉ。……なんとかなったのう」




 それを集子ちゃんが見逃すはずがない。

 差は一気に縮まって、もう一メートルくらいしか距離はない。




「……あれは集子ちゃんの神力か?」




「だと思いますよっ。先頭の三年生女子の揺れる胸の写真を撮れば、高価で買い取るとでも伝えたのだと思いますっ」




「そうなのか? 大出費じゃないか?」




「……そんなお金払う訳ないでしょ? そう神力で思わせただけよ。実際、あのケチが払う訳ないじゃない。後で神力で記憶の改竄するに決まってるでしょ」




 呂姫ちゃんがそう解説してくれた。

 なんともはや、である。




 そして集子ちゃんは三年ポニテ美少女に追いついて、同着でバトンタッチしたのである。




「僕、迷惑かけなければいいなあ」




 これはさっきスタート位置につく前に新井慎一が言っていた言葉だ。




 そうなのだ。

 次の走者は足の速度に自信がない新井慎一なのである。




「大丈夫。慎一は私がきっとなんとかするから」




 そう答えたのは呂姫ちゃんで力強く握りこぶしを握るのであった。




たくさんのカメラレンズを向けられると恥ずかしいのです。(`・ω・´)∩



 


よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。



私の別作品


「生忌物倶楽部」連載中


「夢見るように夢見たい」連載中



「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み


「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み


「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み


「墓場でdabada」完結済み 


「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み


「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み


「空から来たりて杖を振る」完結済み


「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み


「こころのこりエンドレス」完結済み


「沈黙のシスターとその戒律」完結済み



 も、よろしくお願いいたします。

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