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105/512

105話 女体化の応用なのです。

【毎日昼の12時に更新します】

 

 そして俺はまた競技会場へと来てしまっていた。

 もちろん学年対抗リレーに急遽参加が決まったからだ。




「……はあ」




「どうしたんですかっ? なんかやる気がなさそうですねっ?」




 恵ちゃんが俺に問うてくる。




「俺、足が遅いんだ。文字通りにみんなの足を引っ張りそうなんでな……」




「大丈夫ですっ。そのために私がいるんですからっ」




 恵ちゃんは堂々と胸を張ってそう答える。その平らな胸でだ……。

 さっきの二人三脚のときの高校生に成長した恵ちゃんに言われたら元気が出るんだけどな。

 などと、しょうもないことをひとり考えていた。




 ルールはこうだった。

 男子から始まり、次の走者は女子、という形で繋ぐ。

 つまり最終走者は女子なんだが、四女神の中でいちばん足に自信のある恵ちゃんが最終ランナーらしい。




 二番目の女子走者が臥留子ちゃん、三番目の走者が見知らぬ一組男子、四番目が集子ちゃん、五番目が新井慎一、六番目が呂姫ちゃん、七番目が俺、そして最後の八番目が恵ちゃんの順番に決まっていた。




 そして先頭の男子ランナーがスタート位置についた。

 一年生は見覚えのない顔の三組の男子だった。




「位置について。よーい――」




 ――ダーンッ!――




 一斉に一年生、二年生、三年生のランナーがスタートした。

 最初の数メートルは団子だったが、やがて地力の差なのか三年生が抜け出し、そして二年生もそれに追いすがる形で抜け出た。

 つまり一年生はもうすでにビリになってしまったのだ。




 距離は百メートル。グランドをぐるりと一周するコースだ。




 三年生のランナーはだいぶ速い。

 第一コーナーを抜けた辺りからは完全に独走になっていた。

 二年生ランナーもがんばるが、距離は開く一方だ。




 だがそんな二年生ランナーも一年生ランナーよりは確実に速くてじりじりと距離を引き離している。




 そんな状態で三年生ランナーが最終の第四コーナーを曲がったときには、二年生ランナー、一年生ランナーはまだ第三コーナー辺りを走っている状態だった。




 そして三年生ランナーがゆうゆうとゴールし、バトンを三年生女子ランナーに手渡した。バトンを受け取った三年女子は一気に加速し、先頭が作ったリードを守らんとばかりに速度を上げる。

 このランナーもかなり速い。




 その後、二年生ランナーも到着しバトンを渡した。

 それからやや遅れて一年生ランナーが到着した。そしてバトンをすぐさま疫病神:山井臥留子ちゃんへと引き渡す。




「……任されました……ワタクシ……差を縮めて参ります……」




 臥留子ちゃんは今回ももちろん和服だ。

 だがその開かない裾いっぱいに足を動かし加速した。




 その足が速い。

 草履でちょこまかと動かすのだが、目にも止まらぬとはこのことだ。




 やがて臥留子ちゃんはトップスピードに到達した。

 すでに運ぶ足は速すぎて見えない。

 百メートル走競技のときに見せた超高速すり足走行だ。




 十メートルくらい先を走っていた二年生に徐々に追いついた臥留子ちゃんは、そこで一気に抜き去った。




 だがここまででコースの半分は過ぎており、トップの三年生女子ランナーはすでに最終コーナーを通過しそうになっている。




 いくら臥留子ちゃんの高速走行が速くても、残り距離から考えると追いつくのは物理的に不可能に思える。

 せめて幾分か差が縮まる程度と言った感じだろうか。




 三年女子ランナーがゴールまで残り五メートル。

 そのとき臥留子ちゃんは最終コーナーに差し掛かるときだった。




 臥留子ちゃんが右手を高々と上げると三年女子ランナーに向かって振り下ろした。




「……なんとっ!」




 俺は思わず驚いた。

 ボフンと白煙が登ったかと思うと、若さあふれるピッチピチの三年女子がいきなりお婆さんになっていたのだ。

 腰も少々曲がっていてバトンをもっていない左手には杖までついている。




 臥留子ちゃんの神力:女体化だった。

 いや、元から女子なのだから女体だったので、その肉体年齢を変えてしまったのだ。




 元:三年女子のお婆さんは杖をついてヨボヨボと一歩一歩歩み残りわずかの距離を歩む。その間にラストスパートしてきた臥留子ちゃんがお婆さんに追いついた。




 そして第三ランナーの男子にバトンが渡ったのは三年生、一年生、ともに同時だった。




「……なんとか間に合いました……後は……任せます……」




 男子ランナーたちが走り去った後、戻ってきた臥留子ちゃんがそう言った。

 もちろんお婆さんになった三年女子はゴール後は元の若さに戻っている。

 あのままだったら、ものすごく気の毒だ。




「おつかれさん。まあ、後はなんとかなるだろ」




 俺はそう言って臥留子ちゃんを労った。




「ああ、でもまた引き離されちゃいましたよっ」




 恵ちゃんがコースを指さした。

 見るとやはり地力の差が出て、三年生男子ランナーが一年生男子ランナーを引き離してトップになるのが見えたのだった。


リレーはひとりが速ければ勝てるわけではないのです。(`・ω・´)∩



 


よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。



私の別作品


「生忌物倶楽部」連載中


「夢見るように夢見たい」連載中



「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み


「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み


「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み


「墓場でdabada」完結済み 


「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み


「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み


「空から来たりて杖を振る」完結済み


「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み


「こころのこりエンドレス」完結済み


「沈黙のシスターとその戒律」完結済み



 も、よろしくお願いいたします。


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