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104話 裸シューズ再びなのです。

【毎日昼の12時に更新します】



 

 そして空いている左手を頭上高く掲げた後、人差し指だけを伸ばして前方へと振り下ろしたのだ。




「行っけえええっ!」




 それはアニメの中で攻撃魔法を放つ魔術師の姿そのものだった。




 すると効果覿面で反応が出る。




「きゃーっ。なによこれっ! 止めてよっ~!!」

「なんでっ? なんでっ? なんでっ? もうっ見ないでっ~!!」




 トップにいる三年生女子と二位にいる二年生女子が叫んだ。

 それもそのはずで体操着はおろか、上下の下着まですっかりなくなってしまい白い柔肌を晒してしまったからだ。履いているのはスニーカーだけ。つまり裸シューズだ。




「もうっ。サイテーっ!」

「イヤよっ。どうしてよっ!」




 三年生、二年生女子たちは左手で胸を隠し、右手で下を隠した。

 だが豊かな胸隠しつつ、下も隠すのは大変でかなり苦労している。




 そして足を止め、立ち止まってしまったことで、パートナーの男子たちはたたらを踏んでなんとか踏みとどまり転倒は避けたが、歩みは完全に止まってしまっている。




「ついでですっ」




 恵ちゃんは再度、左手を振り下ろした。




「うおっ~!」

「なんだこりゃっ!」




 見たくもないのだが、三年生男子と二年生男子も着ている体操着がすっかりなくなってしまい、素っ裸になっていた。

 なので慌てて下を両手で隠している。




 奇しくも男女ともに裸シューズになってしまっているのだが、見る価値があるのは当然、先輩女子たちの方だけだ。




「大吉さん、目の保養ですねっ」




「……ま、まあな。見たくもないのも混じっているがな」




 俺たちは動きが止まってしまった一位の三年生、二位の二年生チームの真横を堂々と追い越してトップに立った。




 そしてそのままゴールイン。




「やりましたっ。完全勝利ですっ」




「……まあな。いちおうはそうなるか?」




「あ、否定的な表情ですね。集子ちゃんのチーム、臥留子ちゃんのチーム、呂姫ちゃんのチームに続いて、私たちも勝ったんですよっ。これを完全勝利と言わずしてどうしろって言うんですかっ?」




「……すべて神力頼りってのがなあ……」




「細かいことはイイんですっ。大事なのは結果ですっ」




 そう言われてしまうとなんとも反論できない気がしてしまうのだった。




 ちなみに報告すると、俺たちのゴール直後に恵ちゃんの神力は解かれ、三年生チームも二年生チームも全裸は終わり体操着姿に戻ったし、記憶は改竄された。

 そして……ざんねんながら……恵ちゃんも元の小学生サイズに戻ってしまったのだ。




 やがて得点掲示板に今の二人三脚レースの結果が加算された。

 これで一年生は二位の三年生に対してかなりリードしたことになる。




 そろそろ体育祭も大詰めで残り競技は少ない。

 このまま一年生が逃げ切れるかどうかが注目される。




「次はなんの競技かしら?」




「次は学年対抗リレーね」




 澤井遙香さんの質問に学級委員の河合香菜さんが答えた。




「何名出場するんだ?」




「男女四名ずつですっ。女子は全員私たちですよっ」




 俺の質問には恵ちゃんが答えてくれた。

 その全員私たちというのは四女神ってことで間違いないだろう。

 この競技も勝ちに行くつもりのようだ。




「僕も出るんだよね。僕はあんまり足が速くないから心配だよ」




 どうやら新井も出るようだ。




「大丈夫よ。慎一は私が勝たせるわ」




 そう言って呂姫ちゃんが新井の肩を叩く。

 ちなみに呂姫ちゃんは初登場のときから妙に新井のことを気に入ってしまい(よくわからんのだが……、平凡過ぎるのが魅力らしい)、なにかと世話を焼いている。




 そんなときだった。




「捻挫?」




 実にデジャヴュのある単語が聞こえてきた。

 見ると体育祭実行委員会のヤツが来ていて学級委員の河合さんとなにやら話していた。




「わかりました。私の方でなんとかします」




 河合さんがそう答えると実行委員会のヤツが引き上げて行った。




「聞いての通り、リレーに出場予定の一組の男子が急に足を捻挫してしまったらしいのよ。それでウチの二組から代理を出すんだけど――」




「――はいはいはい。大吉さんが出ますっ」




 河合さんが言い終える前に恵ちゃんが飛び上がって発言してしまった。

 ぴょんぴょん跳ねての自己主張だ。これは目立つ。




「なら、加茂くんで決まりね。よろしく」




 ……おいっ! 

 俺は恵ちゃんを睨んだ。




「またお前の仕業だろう? いったい何人怪我させる気だ? だいたいさっきの二人三脚のヤツの捻挫はどうしたんだ?」




「さっきの捻挫の人なら完治しましたよっ。いきなり治ったんで飛び上がって喜んでいましたっ。いやーっ、他人が喜ぶことをするのは気持ち良いですねっ……。って。……はう、痛いですっ」




「なにが他人が喜ぶことだ? それを世間ではマッチポンプと言うんだ!」




 俺の手刀で恵ちゃんは涙目になっていた。




 ……はあ。



 こうして俺は二人三脚に続いて学年対抗リレーも出場することになってしまった。

 ……俺、足、遅いんだけどな。




裸足で地面は痛いので、裸シューズはせめてもの武士の情けなのです。(`・ω・´)∩



 


よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。



私の別作品


「生忌物倶楽部」連載中


「夢見るように夢見たい」連載中



「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み


「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み


「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み


「墓場でdabada」完結済み 


「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み


「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み


「空から来たりて杖を振る」完結済み


「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み


「こころのこりエンドレス」完結済み


「沈黙のシスターとその戒律」完結済み



 も、よろしくお願いいたします。



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