101話 双子化計画なのです。
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次の走者は疫病神:山井臥留子ちゃんのチームだった。
臥留子ちゃんは恵ちゃんよりは背は高いのだが、学年全体で見ればかなり小柄な体格だった。
だがその臥留子ちゃんのペアとなった一組の男子は……。背が高かった。
いや、背が高いだけでなくガタイそのものがデカい。
なんか柔道とかラクビーとかの選手みたいな体格なのだ。
「身長差があるな」
「ですねっ。ちょっと不利じゃないですかっ」
そうなのだ。
恵ちゃんがそう答えるのは当然で、二人三脚では体格差がありすぎると不利になる。
肩の高さが違うことで互いに腕で肩を組みにくいし、第一、歩幅のストロークに差がありすぎて前に上手に進めないからだ。
ちなみに臥留子ちゃんは今回も和服姿なので裾が邪魔することからストロークは余計に小さい。
そして二年生チーム、三年生チームもやはり男女による体格差はあるのだが、臥留子ちゃんたちのように頭一つ違う程のような差はない。
「位置について。よーい――」
――ダーンッ!――
一年生、二年生、三年生の各チームが一斉にスタートした。
やはり二人三脚なのでロケットダッシュできるはずはなく、団子状態で始まったのだった。
「……やはり体格差がマズイな」
俺はそう呟いた。
「苦戦してるわね。……でもまあ、山井臥留子なら、なんとかするでしょ」
腕組みしながら自信満々に呂姫ちゃんがそう答えた。
そうこう言っているうちに、やっぱり臥留子ちゃんたちは遅れてしまい、トップに二年生チーム、二位の三年生チームに置いて行かれてしまっている。
「百メートル走のときのように高速小走りができないものかな?」
俺は臥留子ちゃんが百メートル走で見せた、速すぎて足が見えない高速小走り走行に期待してそう言った。
「だめですよっ。だってそうしたら一組の男子が転んじゃいますよっ」
「だな」
俺の問いは恵ちゃんが答えてくれた。
二人三脚で片方が転んだ状態でもう片方が引きずって走るのでもルール上は問題なさそうだが、それだと転んでいる方が全身擦り傷だらけの地獄絵図となってしまう。
さすがにそれをやるのは鬼畜だろう。
そしてトップが残り半分を切ったときだった。
ボワンと白い煙が臥留子ちゃんチームから巻き上がった。
そして見ると背が高くガタイが良い一組男子からだとわかる。
「……な、なんと!」
俺は唸った。
それもそのはずで一組男子が女体化してしまったのだ。
しかも背丈は臥留子ちゃんとまったく同じ。体格も同じ。おまけに伸ばした髪の毛の長さまでいっしょだった。
「ああ、これなら行けますよっ。体格差がなくなりましたからっ」
恵ちゃんの言う通りだった。
トップ、二位に置いてかれていた臥留子ちゃんたちが、一気に加速したのだ。
二人は双子と言ってもおかしくない、まったく同じ体型なのだ。
なので歩幅もいっしょなので、ペースがぐんぐん上がっていくのだ。
そして二位の三年生チームを抜き、ゴールまで残り十メートル地点で一位の二年生チームを追い越した。
「はい、おまけ」
呂姫ちゃんがそう言うと、臥留子ちゃんのチームメイトである元一組男子の体操着が一瞬で真っ赤な水着になった。
ハイレグビキニ姿である。
……なるほど。これは眼福だ。
元男子は臥留子ちゃんと同じ体型なのだ。
なのでスレンダーボディの臥留子ちゃんが水着姿になるとこんな感じなのかとわかるのだ。
臥留子ちゃんは常に丈の長い和服姿なので身体のラインがわからないことから、そっくりさんの水着姿は新鮮だった。
そしてけっしてふくよかな体型ではない臥留子ちゃんだが、やはりそこは女性らしくウエストからヒップのラインなどは、なかなか見ごたえがある。
「……大吉さん。まさか臥留子ちゃんの水着姿を妄想してませんっ?」
「う……ぐぐぐ」
恵ちゃんに図星を指されて俺は絶句した。
そして無事に臥留子ちゃんたち一年生チームは一位でゴールしたのだ。
神力の影響で誰も異変には気づいていないのはもちろんだった。
臥留子ちゃんの女体化は万能なのです。(`・ω・´)∩
よろしければなのですが、評価などしてくださると嬉しいです。
私の別作品
「生忌物倶楽部」連載中
「夢見るように夢見たい」連載中
「四季の四姉妹、そしてぼくの関わり方。」完結済み
「固茹卵は南洋でもマヨネーズによく似合う」完結済み
「甚だ不本意ながら女人と暮らすことに相成りました」完結済み
「墓場でdabada」完結済み
「甚だ遺憾ながら、ぼくたちは彼の地へ飛ばされることに相成りました」完結済み
「使命ある異形たちには深い森が相応しい」完結済み
「空から来たりて杖を振る」完結済み
「その身にまとうは鬼子姫神」完結済み
「こころのこりエンドレス」完結済み
「沈黙のシスターとその戒律」完結済み
も、よろしくお願いいたします。