「最悪な出来事」
いってらっしゃい?どういう事だとその場で考えたがその答えをかき消す物が私の目に入るとは先程の黒いベルだった。
魔女の家の窓からちらちら見えていたものだが一体なんなのだろうか、これも魔力が覚醒した影響だろうか?
私はそのベルに近づき、目の前でしゃがみありの群れを観察するようにマジマジと眺めた後、そのベルをつまみ上げる。
変な感覚がそのベルから伝わってくる。暖かくも冷たいよくわからない感覚がそのベルから伝わる。
私はそのベルを無作為に振った。
チリンという音が響くとそのベルが手から離れる。何とか宇宙に浮遊し始めたのだ。
「うを」
ベルはしばらく空中で浮遊するとその場で人の形になった。
その形成された人は見たことがあった。さっき私に声をかけてくれたお姉さんであった。
しかし、その姿は灰色であった
「お…お姉さん?」
その灰色のお姉さんはキョロキョロとあたりを見渡している。何かを探すように…
そして後ろを振り返って何か口をパクパクする。まるで誰かに話しかけているように…
「なにしてんの…?」
そしてお姉さんは魔女の家の方向に駆け出した。その瞬間、急に、ぶんっ!とお姉さんが浮き上がった。
体から浮き上がり頭と足がその勢いに押され下に垂れ下がっている。
そして勢いのまま空中に浮き上がると左右に体を振り回されていた。
まるで巨大な何かが体を掴んで振り回しているように…
振り回されたあとそのまま地面に頭ごと投げつけられるように落ちた。音は聞こえないが頭部が潰れた。
音は聞こえないが「ガチャリ」と言う音が聞こえてくるんじゃないかと言うくらい臨場感のある光景だった
「うひゃあ」
そして気づいたがそのたたきつけられた場所が赤黒く染まっていた。
「な…なにこれ?」
私はその血溜まりのような場所に駆け寄った。
とにかく気になるが先行した。
私は地面に手を置いた。そして土を掴んでみる、どろっという感覚が手を覆う。
血ではあるのだが触ったこともない感覚が手を襲う。
脳髄やら何やらがぐちゃぐちゃに入り乱れた結果なのだろうか…
「うげ…」
私は手をブンブンと振るいそれを払うがこびりついて離れない
うわ〜と変な声を出す。
「…カルム!」
私はその声にばっと顔を上げた。慌てて私は手をポケットに突っ込んだ。うげっと思ったがとりあえず仕方ない。そしてばっと顔を上げるとどこか懐かしい母親の顔がそこにはあった。しかし顔を見てもその懐かしさは消えない
「どこ行ってたの!?」
「どこ?どこ…えーっと…」
言葉に詰まる。まさか本当のことを言えるはずがないし見えない人に伝わるわけもない
「あんたがいない間にアンナちゃんが!」
「アンナちゃん…?」
私は思い出そうと記憶を探る。そして先程のお姉さんの名前がアンナだったのを思い出した。会う人全員をお兄さんお姉さん、年下は君と呼んでいたので覚えていなかった
「あぁ、お姉さんがどうしたの?」
「…死んじゃったのよ!」
先程の映像が頭をよぎる
「それって、ここで?」
私が体を避けると血溜まりのようなものが母親の視界に飛び込和田であろうとき、母親は息を呑んだ
「ちょっ…そっ…そうよ!触ってないわよね!」
私は黙って血まみれの手を母親に見せた
「ちょっと!」
母親は私に駆け寄って手を掴んで家の方まで連れ帰った
そして服を脱がすと風呂の中に放り込んだ。
「昔っからお前は!なんでも触って!」
私の体をガシガシ洗うお母さんに身を任せ私は話を振った
「ねぇ、なんで死んじゃったの?」
「なんか急に体が浮き上がってそのまま頭を強く打ちつけたのよ」
「…」
先程見た自分の光景とそっくりだった。
「…魔法?」
「そんなわけ…といいたいけどあれはその類じゃないとありえないわよねぇ」
「見てたんだ」
「遠目でね、近くで見てた人は病んじゃって大変なのよ」
「それって何時位?」
「あんたが家を出て一時間くらいしてから…」
「一時間…」
私は少し考えた。そしてすぐに思い当たる。家から出て一時間はちょうど私が魔力を覚醒させた時間だ。
ひょっとしたらその魔力に当てられたのかもしれない
運の悪い話だ。
「……そういえばなんで私、あんたがいなくて探さなかったんだろう…あれ?」
母親はボソッと呟いた。そして
「セリ…ナ…?リド…ル?」
そう呟き始めた。リドルは確か父親の名前だったが、セリナ、そんな名前は聞いたことがなかった。人の名前を覚えるのが嫌いな私でも一度聞いた名前は聞いたことある程度には覚えていた。しかし、セリナは聞いたことがなかった。誰だっけ?と言う感覚すらなかった。
「ねぇ、お母さん、セリナって誰?」
「…」
返事がない。
「…ねぇ、お母さん?」
私は後ろを振り向いた
「お母さん…!?ちょっ!」
お母さんが私の頭目掛けて近くにあったタライを振りかぶっていた。
不意打ちだった。防ぐことなんてできるはずがない。
どかっという音が風呂場に響いた。
「がっ…」
頭に衝撃が走る。
その衝撃で座っていた私は倒れ込み湯船に頭を強く打ちつけた。
チカチカする頭で母親を見た。
その瞬間、3回衝撃が頭に走った
ドガッ!ガシュ!ビシャッ!と頭から液体が飛び散る音が聞こえた
「っ…」
声にならない吐息を吐いて私は倒れた。
母親はプルプルと震えながら私をキッと睨んでいた。
視界が霞む…
「誰よ!あんた!…カルム!…違う!誰!」
お母さんはそういうと再びタライを振り上げて私に振り下ろした
ズガンッ!と頭から鈍い音がして私の周りが赤く染まっていく。
「おがぁ…ざ…ん」
声も出ない。残響のような声はどこにもどどかなった。
どんどんと体が寒くなる。ひたすら寒かった。痛みは感じていなかった…
「セリナ…セリナ…」
母親はぶつぶつ言いながら風呂場から出て行った。
血みどろの景色の中朧げな意識の中で死に対しての恐怖も感じず、委ねるように目を瞑った。




