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シデの道標  作者: BOW
忘却の村
6/11

「覚醒と違和感」

「魔力は意識すればするほどしっかりと確認できる。集中して体の中を探るようにしてみて」

「はい…」


 魔女は私の頭に手を置いて優しく言う。

 私はガチガチに緊張しながら椅子の上で体を探るようにするがよくわからない


「落ち着いてリラックスして、力んだから魔力が暴走しかねない、最悪破裂するよ」

「…はい!」


 私は目を瞑り体に意識を向ける

 その瞬間、魔女が私の頭に手を置いた


「今から私の魔力を流し込んでみる。同調か反発かわからないけど何かしら体から反応が返ってくる、それが魔力だよ…いくよ!」


 魔女が合図すると頭からゾワっとした感覚が体の中に入ってきた。


「うっ…」

「集中!この魔力が感知できるなら素質はあるよ!」


 魔女はそう言った瞬間、心臓の方から何か熱いものを感じた


「なに…これ…」


 魔女は頭に置いた手に力を込める。


「それが魔力だよ!よしそれを…え?」


 魔女は驚いたように私から手を離した。

 私はそれでも集中する事をやめずに心臓に意識を向ける。その心臓に感じた感覚はいつの間にか全身に広がっている。


 魔女が何か言っているような気がした。しかしそんなことは気にならない、私は初めて感じる感覚に身を委ねる。体に宿るこの力に向き合う方が大切だった。 


 もっと もっと もっと もっと もっと もっと


 触っていたいこの感覚に…

 なんでもいいどうなっても…


 バチンッ!という音があまりに響きビリビリと痺れがほおを伝った。その瞬間、ハッと我に帰った


「よかった…間に合った…」


 魔女は肩でため息をつかへなへなと私の前に座りこんだ、

 私は何が起こったのかわからずとりあえず頬を触った。恐らくビンタされたのだろう。

 困惑したままだが辺りを見渡す。

 そして動きを止めた。周りの光景を理解するのに少し時間がかかったのだ。


 それもそのはず、先程まで家の中にいたはずなのに家の外にいたのだ。あたりにはクレーターのような抉られた跡があった。つまり、正確には家を丸ごと消しとばしたというのが正解のようだった


「これ…私が?」

「そうそう…焦った…待ってね」

 魔女はそういうと杖を捨てて手をかざした

「戻れ」


 そう魔女がいうと周りの瓦礫が全てこちらに飛んでき手先ほどの家の方を形成し始めた。そしてみるみるうちに私の周りを囲むと元に戻った。

 私は魔法はすごいと目をキラキラさせていた。

 魔女はその目線に肩をすくめる。


「杖使わないんですね」

「杖はリモコンみたいなものだからね、家の中で使う用の…」

「り…りもこん?」

「あぁ…えっと、家の機能のオンオフを全部杖一つに入れたんだよ、さっき君を拘束した魔法もこの家にある防衛魔法を適当に起動させただけだし」

「な…なるほど…」


 そんな話をしている間にも家はどんどんと修復され何事もなかったように元に戻った。

 そして家が元に戻ると魔女は椅子に座った。


「それにしても…すごい魔力だね、初めて見たよあんな魔力」

「本当ですか!?」

「嬉しいんだ…あぁ…そう…」

「?」


 いや、いいんだ


 魔女はそういうと窓の外を指さした


「村、見える?」


 私はそう言われ窓の外に顔を出した。

 そこにはなんと私の村があった。

 荒廃した土地はどこにもなくしっかりと人もいた…

 しかし、何やら騒がしい


「何か騒いでる…?」

「君が行方不明だからじゃない?」

「あぁ」


 確かにと思ったが何か他人事のような気がして私は変な返事しか出てこなかった。


「ん?」


 私は目を凝らす。何か広場の真ん中に『黒いベル』のようなものが落ちていた。禍々しいようなそれでいて厳かで静かなオーラを放ってその場に浮遊している。


「何あれ?」


 さらに私はじっと目を凝らす。すると魔女が私の肩に手を置いた


「何みてるの?」

「いや、何か黒いベルが…」

「ベル?どんなの?」

「あれですよ」


 私は指をさすが魔女は苦笑いした。


「…あ〜そうね…」


 魔女はそういうと椅子から立ち上がり窓の外を見る


「…私には見えないなぁ」

「え?」


 魔女に見えないってどういうこと?

 私は首を傾げながら魔女の顔を見た。魔女はそれを見るとふっと笑い再び椅子の前に座った。


「私はこの村自体が見えない」


 そう言った。


「は?」


 私は困惑した。それを見て魔女はまた笑う


「私はさ、ここにはとある調査に来たんだよ、この付近で人が消えたり現れたりするっていうね」


 魔女は外を指さす。外は普通に村の風景だ


「私の目には今でも何もない死の大地が目の前に広がってる」

「え?…」

「わからない?私からすればそんな村、存在してないんだよ」

「…ちょっと待ってください?…え?…見えてないんですか?…村?」

「じゃなきゃ村の真ん中?にこんな家建てないって」


 魔女はそういうとさらに偉そうに椅子に座り直した


「…」


 私は固まった。そしてさらに思考を進める


「…私たちの村は別時空にあるって事ですか?」

「知らないよ、別時空って何さ、まぁでもそう考えられるかな」

「じゃあ、村から出てはいけない掟ってそういう…」


 私がぶつぶつ考え始めると魔女はパンっ!と手を叩いた


「…私も少し調べたいことがあるから明日また、来てくれない」

「え?もう帰らなきゃいけないんですか?」

「色々まとめなきゃいけないことが多いしそれにここにいる間は面倒見てあげるから、ご両親も心配してるでしょ?」

「…まぁ…」

「どっちにしても明日来て」


 おそらく来れるだろうがこの村とこちらの世界の関係上何が起きるかわからないのに不確定なことを頼むなぁ…


「あっそうだこれ」


 そういうと魔女は簡素な指輪を出してきた


「あれだけの魔力、多分引き出したばかりで制御しきれないと思うからこれつけておいて、ある程度は抑制してくれる」


 私はその指輪を受け取るとマジマジと眺めた


「…」


 私は黙って指輪をはめる。すると心の中で何かがすっと落ち着く感覚がした。魔女はそれを見て頷く。


「ほら、わかったならとっとと出な、これ以上心配させない」


 そういうと私の背中を押して部屋の外に押し出した。そこは魔法じゃないのかと思いながら私は誘導されるがままに扉の前に立った


「魔力が覚醒したからもしかしたら何か変化があるかも?あした一日村の中散策してみてよ、それで夜来て…それと何か日記とか書いたりしてない?」

「日記…あぁ、それっぽいものはあります」


 それっぽいものというか日常を小説風に書いたものである。特に面白みのある話ではないので他人に見せたいとは思わないけれども


「それも明日持ってきてくれない?」

「?まぁ、いいですけど…」

「あぁ、それと」


 そう言うと魔女はものすごく真剣な眼差しで


「君のお父さんの名前、ひょっとして『リドル』じゃない?」

「え?…あぁ!確かにそうです!…てか、何で知ってる…」


「じゃあまた明日」


 その瞬間、勝手に扉が開き私は吸い出されるように外に出される。


「いってらっしゃい」


 魔女はそう言った。私はそれを聞いて振り向くが既に扉は閉じていた。

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